HEAVEN 強姦編 2

 ベッドにたどり着くと、両手をベッドに付けるように命ぜられた。
 立ったまま柔らかなスプリングに手を付くと、後ろに立つ監督の視線が腰に集中しているのを感じて、恥ずかしくて仕方がなかった。

 背後から下着ごとズボンを下ろされ、身に付けていた衣服はするすると足元に落ちていく…。
 剥き出しの尻を怪しく撫で回す手が何度か蕾に触れると、冷たい『何か』が塗り付けられた。
「?!」
「大丈夫。害は無いから」
 ビックリして竦み上がっていると、監督からはそんな台詞が返ってきた。

 害なんか、あってたまるかっ!
 内心では悪態をついていたが、クリームの付いた指で入り口を弄られると小刻みに震えが走る。
 浅い息を繰り返しながら耐えていたが、やがて体温に馴染んだクリームと共に指が入りこんできた。
「………っ。」
「ほら、もっと足を開いて…」
 おずおずと言われた通り足を開いていくと、その動きに合わせるように、指が奥へ奥へと埋め込まれていく。
「やっ……っ」
 長い指で何度も内部を掻き回されると、途端に足がガクガクと震えだして立っていられなくなる。
 力の入らなくなった足がゆっくりと折れていくのを、咎めるように監督が腰を支えた。
「あ……」
「ほら…。ちゃんと立ってないと…。」
 こういう時の監督の声はいつもより低くくぐもるので、欲情しているのが伝わって嫌でも煽られる。
「あっ、………ぁ」
 立っていなくちゃと頭では考えているのに、身体からはどんどん力が抜け落ちて行く…。
 足を支えようとすれば、その分の力が吸い取られるように腕から抜けていき、支える力を失った腕は崩れ、顔からシーツに落ちた。
 腰だけを高くしたポーズで、上半身はベッドに埋まりながら、震える膝を何とか宥めて立つのがやっとだった。

 いっそ早く挿れてくれれば、支えて貰えるのに…。
 一瞬、そんな考えが頭をよぎって慌てて頭を振って追い払った。
「ん……ぁっ………っ」
 段々、押さえることの出来なくなった声が俺の声だとは到底思えないような甘い声が漏れる。
「も、……やぁっ」
 息苦しさからか、一筋の涙が溢れて頬を伝う…。
「ふっ…くぅっ。」
「泣いてるの?」
 突然、優しく話し掛けられてハッとする。
 慌てて拭うが、今更取り繕えなかった。

「そんなに泣くなよ。もっと酷くしたくなるから…」
「―――え?」
 そっと振り返ると、監督は何かを持っていた。
 ―?

 それは、ピンポン球より少し小さめのボールがいくつか連なっていて、最後には大きなリングが取り付けられていた。
「なに―……それ。」
 監督の唇が、ゆっくりと笑みを象っていった。

「やめっ……。や……やぁぁぁっっ!」
 先程のボールがグイグイと内部に押し込められ、異物感に堪えきれず悲鳴が上がる。
 体験したことのない圧迫感と、力を込めても一切形を変えることのない無機質な物質に、無理矢理内壁が押し広げられていく…。
 迫り上がる悪寒が吐き気を誘って、頭がグラグラする。
「ほら、力を抜かないと上手く入らないよ」
「やだっ。やだぁぁぁぁぁぁっっ」
 先程まで散々指で弄られていた秘部に、一つ一つボールが埋め込まれていった。
「う……うくっ……。ふ………ぁぅっ」
 ――苦し……っ。
「気持ちよ悦さそうだね」
 言われて、弾けるように反応した。
「どこがっ!」
 噛みつくように睨み付けてやったら、監督の指が俺に埋め込まれたボールの先に付いていたリングにかかっているのが見えた。
「そう?つまらないのなら抜いてあげようか。お互い楽しくないとね…。」
 たった今埋め込まれたボールを、監督はリングを引いて取り出していった。
「…………あっ。ぁっ!ああぁぁっっ」
 何がお互い楽しくだ。写メで脅迫しておいてっ。

 頭ではそう思っていても、ゆっくりとソレが引き抜かれて行くと、挿れられた時にはまったく感じなかった無機質な刺激が弱いところを抉るように刺激してくる。
 溜まらず声を漏もらして耐えるが、震えて閉じることが出来ない口元からは、溜まった唾液が溢れ出て顎を伝う。
 味わったことのない快楽に、堪らず膝が崩れ床へとへたり込んだ。

 しゃがみ込むことで止めてくれるかと思ったのに、監督は座り込んだ俺の尻から連なるボールを引き抜く力を緩めてはくれなかった。
 自然と引き抜かれることを恐れて浮いた腰が、ボールを追って腰だけを高々と上げるポーズをとる結果になり、一番恥ずかしいところを監督に晒すハメになる。
 立ち上がろうにも、今更力の入らない身体では適わず、ただ羞恥に耐えるしかない。
 恥ずかしくて、顔から火が出るかと思った。
「ヒクヒクして……。随分と、もの欲しそうに見えるよ?本当に、悦くない?」
「…………っ」
 追い打ちを掛けるような煽り文句に、返事も出来なかった。口を開いたら最後、あられもない嬌声を上げて許しを乞いそうで、ソレを押さえるので必死だった。
「……そっか、なら仕方ないな。」
 ―?
「ん……あっ……ぁぁ。」
 最後の1つを残すところまで引き抜かれたソレは、再びツプツプと押し込まれていった。
 腰がざわついて全身が震える。さっき挿れるときは異物感しか感じなかったのに、一度『抜かれると気持ちいい』と身体が覚えてしまえば、快楽に変化する。
「はっ………ぁっ……。」
 全部埋め込まれて、浅く息を吐く。落ち着かなければ頭がおかしくなってしまいそうだった。

 カタリ…、と、頭の上で物音が聞こえた。監督がベッドに備え付けられている小さな引き出しの中を探っている。
「あ、しまった。」
 ………何が「しまった」なのだろう?どうせまた、ろくでもないモノでも出てくるんだろうなとぼんやり考えていたら、背後でコートを着込む監督の気配がした。

「?!」
 慌てて振り向くと、クールな顔で身支度を整える監督の姿があった。
「…ゴムを切らしていたよ。コンビニはすぐ近くだから、ちょっと買ってくる」
 何を言っているのか、すぐには理解できなかった…。
 
 俺をベッドへ転がして両手首をタオルで縛ると、監督はスタスタと玄関のドアへと向かう。
「ちょ…ちょっと待てよ!俺をこのまま置いていく気かよっ」
「ほんの数分だ。ゴム無しじゃ後始末が大変だろう?」
 こんな状況で1人放って置かれるのが酷く不安だった。
 突っ込んで終わりならさっさとして欲しかった。
 どうせやらなきゃ終わらない。玄関に向かう監督は、数秒後には部屋から消えてしまう。その焦りが俺に飛んでもないことを口走らせた。
「待てよ!生でいいからしろよっ!!」
 その声に監督がゆっくりと振り向いた。足が止まったことでホッとしたが、その顔は俺を犯すときの男の顔をしていた。
「君がそんな事を言うとはね…。」
 機嫌が良さそうに笑うと、監督はそのまま出ていった。

 それで、急速に理解した。これは”プレイ”なんだと…。


   ◇  ◇  ◇


 1人放置された室内で、ベッドに縛り付けられている手の戒めを解こうと懸命に手を動かすが、縛っているのは柔らかいタオルにも関わらず、一向に結び目が緩むことは無かった。
 決してキツク結ばれている訳ではないのに、緩む気配をまったく見せない結び目を見て、監督の器用さにほとほと感心する。

 監督の口振りから察するに、コンビニはそう遠くはないのだろう、仕方がないので1つ息を吐いて監督を待つことにする。
 逃げたところで、また写真で呼び出されるのだ。

 それにしても、監督は一体いつまでこんな事を続ける気なのだろうか?
 男色だと、風俗へ行って性欲処理とは行かないからだろうか?
 たった一枚の写真で、タダで好きなだけ抱けるのだから、自分は都合がいい存在なのかもしれない。
 そう考えると、急に寂しくなった。自分はこんな所に繋がれて、一体何をやっているのだろうか?
 ただ、野球がやりたいだけだった。こんな事をしていたかったわけではない。
 やりきれない感情が込み上げて、涙が溢れてきた。
 監督を前に涙は見せたくはないが、今なら誰もいない。涙を流すのは今だけだ。監督が帰ってきたら、何でもない顔をしなければ。

 ぱしぱしと、何度か瞬きをして溜まった涙を全部零すと、顔を拭くために身体を捩ってシーツに顔を押しつけた。
 ゴシゴシと擦りつけていると、不意にシーツから立ち上ってきた監督の匂いが鼻腔をくすぐる。

 ―監督の匂いがする。
 監督の匂いに包まれて、まるで抱きしめられているかのような錯覚を覚えて凍り付いた。

 監督のベッドなんだから当たり前だ。俺を組み敷いて、重なってきたあの肌と同じ匂いに包まれると、嫌でも情景が浮かんでくる。
 自然と下腹部へ集まる熱に抗いきれず、反射的に内壁を押し広げている無機質なボールを締め付けるように力が籠もった。
「……っ」
 先程までは頭の隅に追いやることに成功していた器具が、いやにリアルに形を意識させる。
「ふ……ぅっ」
 収縮してしまった事で、中のボールがお互いにぶつかり合い、それがまた更に新しい刺激を産む…。
「…………ぁっ」
 力を込めて堪えるが、その動きが悦い所を刺激する事に気が付いてしまった。
 貪欲な内壁は花が綻ぶかのように力を抜き、締め付けられていたボールが再び位置を変える。
 ほっ…と息を付くが、さっきの刺激を期待して身体が勝手に力を込め始めた…。
 甘い疼きを誘う刺激を期待したが、先程とは違うところを刺激してしまい、空振りに終わった不満からか、身体が勝手に「もっと…」と要求してくる。
「あ…っ、………はぁっ………んん……ひぅ……ぅっ」
 誰も見ていないのを良いことに、あさましく腰を揺らめかせ、何度も意識的に収縮を繰り返しながら貪欲に性欲を追う姿は、とてもじゃないが監督には見せられなかった。
 『今は戻って来て欲しくない』という思いと、『早く帰ってココを貫いて欲しい』という願望が鬩ぎ合う。
「監……と…く。監督ぅ……。」
 この出口のない甘い疼きから解放してくれる人は1人しか居ない。無意識に、その名が口をついて出た。


   ◇  ◇  ◇


 ガチャ…
 鍵を開ける音に、一瞬で緊張が走る。
 
 監督が帰ってきた!
 
 安堵と同時に、下肢の現状をどのように揶揄されるかと思うと、顔に熱が集まる。
 開かれたドアが再び施錠され、足音がこちらへ近付いてくる。
 時折カサカサと音がするのは、コンビニのレジ袋だろう。買ってきた物を俺に使うのだと思うと恥ずかしかったが、何処かでそれが嬉しかった。

 ………もしかして俺、期待してんのか?
 近付く気配に呼応するかのように心臓がドキドキと早鐘を打ち、自分でもどうしてこんな状態になるのか分からなかった。

 俺の側に姿を表した監督は、俺が縛られたベッドの横に立ち、すっかり勃ち上がってしまった俺の先端を人差し指で円を描くようにクルリと撫でた。
「………んぁっ」
「元希さんはいやらしいね…、こんなに赤く充血して、堅くなってる。」
 指の動きに呼応してビクビクと反応してしまう俺を眺めながら、監督は楽しそうにそんな事を言う。
 指先がこぼれ落ちる蜜を辿り、性器へ緩い刺激をもたらす…。

 もう、それだけで達っしてしまいそうだった。堪えるために下腹部に力が入ってしまい、身体の中にあるボールが位置を変えて、感じるところを抉るような感覚が走る。
「………っ」
「随分欲しそうだね」
 俺の反応を確かめながらヒクつく後口撫で、そのから繋がるリングを手に取った。
「あ…」
「抜いてあげようね」
 1つ、1つ、ボールが引き抜かれていった。
 こんな状況でイったりしたら、また何を言われるか分からない。
 これ以上余計な刺激走らないよう、腰を浮かせて身を捩りながら抜かれていく快楽に耐える。
「………くぅっ」
 次々と排出されるそれが、ようやく最後の1つが引き出されようかとする寸前に、引く力を緩められたので再び奥へと潜り込んでしまう。
「ああ…っ」
「美味しそうに飲み込むね、抜かれるのが名残惜しい?」
「………っ」
 あまりの言いぐさに反論も出てこない。
 悔しいのと情けない気持ちで一杯になった時、再度引かれ最後の1つが引き抜かれた。
 たっぷり滑ったローションが、ボールを追いながら垂れていき、シーツを汚す。

 やっと身体の中から取り除かれたことで安堵すると同時に、今まで埋められていたそこが、急に空になった喪失感に戸惑う。

 本能的に、ここを埋めるものが欲しくなった。
 “それ”が何なのか、俺の身体はもう十分に知っている。
 望むものを見つめながら、唾液をゴクリと嚥下した。

「俺の準備は、まだなんだけど…。」
 俺の視線に気付いたのか、戒めを解きながらそう告げてきた。
 意味を理解してのろのろと起きだし、まるでそうするのが当たり前のように監督のベルトに手を掛け、欲しかったソレを取り出し、手と口を使って育てていく…。

 最初はこわごわ先を舐めてみたが、特に変な味はしなかった。
 他人のものをこんな間近で見るのは初めてだったが、不思議と嫌とは思わなかった。
 口に含みきれなくなるまで大きくなってくると、待ちわびて疼く場所に熱が集まる…。

 ………まだ……かな。
 チラリと監督の顔を盗み見ようとしたのに、バッチリ目が合ってしまった。
 慌てて視線を下に落とすが、監督の大きな手が顔の横を通り、首筋を弄ぶ指先にビクビクと身体が震える。
「ん……っ」
 塞がれた口から漏れた抗議は、甘く熔けた鳴き声のように耳へと響いた。
 得体の知れない高揚感に戸惑いながらも、次第に頭の芯が痺れていく…。
「くっ……」
「―― ?」
 突然腰を引かれ、口からズルリと監督が引き抜かれた。反射的に後を追うと顔に何がかかって、とっさに目を閉じた。

 ツンとした臭いと共に、髪から伝う雫がポタリと鎖骨へ落ちた。
「ごめん、汚しちゃったね…」
 俺の顔を手で拭いながら、監督が謝罪を告げてくる。
 伝えられる言葉の意味が分からなくて、されるがままにまかせ、濡れた指先で唇をなぞられながら、その感触に痺れるように震えた。
「大丈夫?」
 優しく問われてコクリと頷く。
 何が大丈夫なのかはよく分からなかったが、取りあえず怪我はしてないし、目にも入らなかった。

 口付けを交わしながらベッドへ押し倒され、足を左右に大きく開かれる。
 羞恥を覚えたが、今はそれ以上に監督が欲しい。
 自分に覆い被さってくる身体へ、腕を絡ませ引き寄せる。早くして欲しくて腰を浮かすと、自ら下肢を相手に擦りつけ、お強請りしているような格好になる。
 流石に恥ずかしくなって腰を引くが、監督に腰を捕まれて適わなかった。

 クチュ…ッ
 粘り気のある水音と共に、あてがわれた雄の証が待ち望んだ場所へ割り入って侵入してくる。
「あ………あっ…………ぁぁ――っ。」
 欲しくて欲しくて、空っぽだった場所が確かな質量で埋まっていく…。
 徐々に入ってくるそれを反射的に締め付けると、さっきの無機質なボールとは違い、ちゃんと肉の感触があった。
 思わず先程のボールを締め付けた動きで確かめていると、監督に「そんな動き、何時覚えたの?」って言われて、顔から火が出るかと思った。
 恥ずかしさに息苦しさまで覚えた頃、一番感じるところを刺激されて頭の中が真っ白になるくらい気持ち悦い。
 すべて根元まで埋め込まれた監督を感じて、ハァハァと忙しい呼吸を浅く繰り返しているうちに、ふと腹が濡れていることに気付く。
 嫌な予感に、背中にじんわりと汗が滲んだ。
「そんなに気持ちよかった?」
 「挿れるだけで…」と、続けられて絶句する。

 ショックで固まる俺の脚を抱え上げ、太股の内側にチュッとキスを落として腰をゆっくりと使い始めた。
「あ…ちょっ、待……」
 内部を確かめるように腰を回され、その存在をありありと感じる。
イったばかりの過敏な身体には、刺激が強すぎる。
「んぁっ………やだ、ちょっと……待って…って………。
「ダメ」
「あっ……あぁっ……ん、」
 お願いは聴いて貰えなくて、緩慢だった腰の動きが、徐々に激しい抽送へと変わる。
「くぅっ……。やぁ…っ」
 逃れたくて身を捩ると、それが丁度悦いところに直接当たって、今まで一度も感じたことのない甘美な痺れが、背筋を伝い腰から全身へと走った。
「あぁ……んっ」
 一度それを知ると欲しがる身体を止められなくて、監督の腰の動きに合わせて自らの腰を動かしてしまう。
 その度に、陶酔するほどの快楽を味わうことが出来て、夢中で追いかけた。
「あ…っ、あ……監…督。監と…くぅ……」
 監督の荒い息づかいが耳に届いて、監督も興奮してくれてるんだと思うと、何だか嬉しくて何度も名前を呼んだ。
「タカヤ」
「……………?」
 『タカヤ』と言う言葉の意味が分からなくて、朦朧とした意識を中で閉じていた目をうっすらと開いた時、ぼんやりとそれが監督の名だと思い当たる。
「タカヤって、俺の名前呼んで…。隆也だよ。タ・カ・ヤ」
「タ…カ…ヤ…」
 揺さぶられながら言葉をそのまま反芻すると、ふいに監督が動きを止めた。

 急にどうしたのかと監督を見ると、俺を見つめてあまり嬉しそうに微笑んでいたのでドキリとした。

 そっと降りてくる唇に、タイミングを合わせて目を閉じる。
 唇が触れると、鼓動が跳ね上がった。どうしてこんなにドキドキするんだろう。おかしいよ俺。

 口内を探る監督の舌も、いつもと違う。凄く熱くて柔らかくて…。触れてみたくなって、おずおずと俺からも舌を伸ばす。
 監督の舌に触れると、あっという間に舌を絡め取られ、監督が一気に興奮したのが分かった。

「あ……ぁっ、……はぁっ」
 首筋を熱い舌で愛撫されながら、再度腰を揺すられ始める頃には、俺に興奮している監督が可愛くすら映った。
「ひゃぅ…、あぁ………ぁっ…ん。」
「好きです……。元希さん」
 熱に浮かされるように告白されて、思わず赤面する。

 こんな恥ずかしいことをされていて、今更ここまで恥ずかしくなることに自分でビックリした。
「ああっ、ひっんぅ…っ。やぁっ……。」
 奥を突かれて、感じるところを何度も刺激されながら、すっかり回復した前がタカヤの腹に擦れて困る。
 ただでさえ「好き好き」言いながら、首筋や鎖骨を舐め回してあちこち触ってくるのに、こんなに一度にされたらおかしくなってしまう。
 クチュクチュと響く粘着質な水音と、身体のぶつかる音が部屋に色を付けていくようだった。
 気持ちよさに溢れた涙が、腰を突かれる度に押し出されるように流れて、口からはだらしなく唾液が伝う。
「タ……タカ…ヤぁ…っ。……あーっ」
 睦言を紡ぎながら全身で熱っぽく俺に触れてくる監督に、心まで愛撫されているのかと錯覚する。
 今まで何度も抱かれてきたのに、どうしてこんなにも違うのか。
「凄く可愛いね元希さん、そんなに可愛いと、このまま閉じこめてもっと酷いことしたくなるな…」
「酷……こと?」
 酷い事って何だろう?考えたいけど、白濁した意識の中では考えが纏まらない。
 また置いて行かれるのだろうか?
 不安になってタカヤを見ると、優しそうに笑ってて…俺の耳元にそっと顔を寄せて囁く。
「俺の、恋人になりなさい」
 言われた瞬間、タカヤを締め付けているところに力が入ってキューッと締め付けてしまった。
「わっ……ちょっ、そんなにされたら持たな…っ」
「俺も…、もうダメ」
 タカヤに縋り付いて窮地を告げると、タカヤが激しく腰を動かし初めたので、ソレに合わせて2人で果てた。


   ◇  ◇  ◇


 ドクドクと、タカヤの精が自分の中に注ぎ込まれているのが分かる。満足してくれたことが嬉しくて擦り寄るが、ふと気付く。
「コンドーム買いに行ったんだよな?なんで使わなかったの?」
 さっきまでハァハァ言ってたくせに、俺の疑問にタカヤが顔を上げたら、もう涼しげな顔をしていた。
「生でいいんじゃなかったっけ?そっちの方が美味しそうだったから、ツイね…」
「……………つい、じゃねーよ!じゃあ買いにいく必要なんか全然なかったじゃねーか。」
「そうでもない。」
 突如、真剣な顔をするタカヤに思わず息を呑む。
「おかげで初めて自分から腰振るくらい感じてたじゃないか…あんな技覚えてくれるなら、これからもちょくちょく外出しようかな。」
「腰ふ……っ」
 それ以上は言葉にならず、金魚のようにパクパクと口が虚しく動くだけだ。
「それに、待っている間あんなに可愛く泣いてたじゃないか。」
「…………なんで知って。」
 知ってる筈がないことを言い当てられて、素直に疑問が口に出る。
「勿論、室内カメラで見ていたからに決まってるじゃないか。あれから車に戻って、車内に置いてあったパソコンで見てたんだよ」

「…………鬼っ。」
「まぁ、そう言わずにさっきの返事聞かせて」
「返事?」
 何の事だか思い当たらず困惑していると、監督が1つ溜息をついて教えてくれた。
「俺の恋人になって…て、さっき言ったろ?」
 普段とは違う、トーンの低いエロ声で囁かれてゾクゾクする。

 しかし―
「全力でお断りします。」
 キッパリ断ったが、タカヤは「そう言うと思った」なんて言いながら、俺の中から出ていった。
 怒らせちゃったのかな?…と、後悔を覚える間もなく、両手をベッドに押しつけられる。
「?」
「イエスの返事を貰うまで、頑張ることにしよう」
「…………へ?」

 俺は、この時素直に言わなかったことを後悔した。
最終的には「優しくて、素敵で、大人なタカヤの恋人になれて嬉しいです」なんて言わされるハメになった。
こんな事いわせるやつが、大人なわけがねーよ!!



「そんなに泣くなよ。もっと酷くしたくなるから…」
この台詞の使用許可をくださった秋様。委託を引き受けてくださった、さなえ様。

予定になかったこの話が書き上がったのはお二人のおかげです。本当に有り難うございました。感謝感謝なのです。

2009.05.22



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