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【Real Dark】
お土産を抱えながら正守は、暫くぶりの実家の玄関の鍵を開けた。
「ただいま」
人の気配は無く、静まりかえっていたが、玄関には靴が2足転がっていた。
揃えられていないから、良守のものだろう。
2足ともその状態と言うことは、誰か来ているのだろうか?

さして気にもとめず、荷物を下ろしに居間へと進み、お茶を入れて一服付いていた。
今日来ることは連絡してあったから、そのうち父さんも戻ってくるだろう。

手入れの行き届いた庭に、似つかわしくない黒く大きな鉄球。
側にはへこみがいくつがあるから、良守がそれだけ頑張って修行して居るんだろう。

あいつ、まだ時音ちゃんのこと好きなのかな?
ふと、そんな事を考えたときに、時刻がすでに夕暮れ時になっていることに気が付く。
他にすることもないので、良守の様子を見に行くことにするか…。
友達も来ているようだが、顔を出すぐらい別に良いだろう。
少し驚かせてやりたくて、気配を絶って良守の部屋へと近づいた。

すると、微かな話し声が聞こえてくる。
徐々に近付くにつれて、それが話し声でないことに気づく。
「………ぁ……はぁっ」

「……良守?」
不穏な空気を感じながらも、声を掛けて部屋の襖を開ける…

目の前の情景に我が目を疑う。
弟が…良守が、男に組み敷かれていた…。
俺が衝撃に固まっている隙に、良守に乗っていたやつがダッシュで逃げだした。
ぶつかってこられたが、その時はあまりの衝撃に気が付きもしなかった。