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【兄貴の恋人 番外編】
 ふと、良守が正守の左手に違和感を覚え、その手を見て凍り付いた。
 左手の薬指に嵌った指輪…。
「ああ、コレ?」
 指輪を見て固まる良守に構わず、正守は触れる手を一向に止めようとはしない。

 その悪びれること無い態度に、次第に良守の目は伏せられ、徐々に視線は畳へと落とされていった…。
『…何で?』
 どうして何も言ってくれないんだろう?
 正守には、こんな指輪を交わす相手がいるのだろうか?
 俺は?

 俺は兄貴にとってどんな存在なんだ?
 不安で堪らないが、それ以上問いつめる言葉が出てこなかった…。

 ……もし、もし兄貴がその女性に本気だったら、とてもじゃないけど引き留められない。
 何も言わず足下を見つめる良守の腰に、正守の手が伸びる。
「…あ?」
 慣れた手つきでスルリと下着の中へ侵入し、双丘の間に隠れる後口へと、遠慮なくその 長い指を埋め込んでいっだ。
「ぐっ…」
 指とはいえ、急な侵入は痛みを伴う。
 顔を苦痛にゆがめる良守の耳へそっと囁く。
「抜いてみなよ…」
「……え?」
「知りたいんだろう?もし婚約指輪なら、内側にイニシャルが彫ってあるはずだけど?」
 その時始めて内部に埋め込まれた指が、左手の薬指なのだと気が付いた。

 正守の言葉を聞いて、目の裏がかぁ…と赤くなった。正守の……相手。
「ココで抜くなら、見ていいよ…」
 指をくわえ込む入り口に、自然と力がきゅーっと籠もった。