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【妖混じりの子供達】
夜行の庭には、完全変化した志々尾が鎖に繋がれ、逃れようともがいていた。
志々尾が夜行にきてからは、すっかり見慣れたいつもの日常。
翡葉は、ぼんやりとその姿を見つめながら昔のことを思い出していた…。

「君はここにいて良いんだよ」
そう言って俺に笑いかけてくれた頭領を見たとき、生涯この人に仕えようと思った。
大嫌いだった妖混じりの能力も、あの人の役に立つなら悪くない気がした。
夜行に預けられてからと言うもの、一生懸命訓練して左腕の能力が完全に支配下に置けるようになった頃、頭領から仕事を任された。
妖混じりの疑いのある少年を夜行に連れてくるように…その頃の俺の主な仕事だった。
閃たちも俺が迎えに行っていたから、いつもの調子で「お仲間だ仲良くやろうぜ」…と、初めてあったとき志々尾に話し掛けた…が、その圧倒的な強さに全く歯が立たなかった。

こんな事は初めてだった。
一瞬で左腕をもぎ取られ、逃げられてしまった。
そのスピードも、とても追いつくようなものではなかった。
自分ではどうすることも出来なくて、仕方なく応援を要請したとき…来てくれたのは頭領だった…。
「うん。まぁ手空いてたし」
そう言って、あいつを追っていってしまった…
俺が1人で任務をこなせなかったこと…頭領はどう思ったんだろうか?