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【秘めごと】

 カチャ…、カチャカチャカチャカチャ………。
 キーボードを叩きながら、深夜の薄暗さの中、1人でモニターを見つめる。
 納戸には僕しかいないから、明かりを付ければいいんだけど…。今は、何となく暗い場所にいたい気分だった。
 昼間の喧騒が嘘みたいに静まりかえっていて、外から聞こえる虫やカエルの鳴き声に包まれていると、世界中に自分だけしかいないような錯覚に囚われて、妙に落ち着いた。

 ………昼間、健二さんと夏希姉ちゃんが、キスしてた。

 胸の奥がチクチクと痛む。なんで、こんなにショックなんだろう。
 数日前、大婆ちゃんの葬式の時、親戚中が見ている中で2人がキスしようとした時は応援していたのに。
 モヤモヤとしたものが胸に広がって、苦しくなってきた。
「これじゃ、健二さんを好きみたいじゃないか…。」
「あれ?佳主馬って男イケるの?」

 突然声を掛けられて、弾かれるように振り向けば、侘助おじさんが立っていた。
 今の…、聞かれた。
 ショックに動けないでいると、おじさんはそのまま納戸へ入ってきて、僕のすぐ側までやって来た。
「あれ?おい。顔真っ赤だぜ。」
「…!」
 慌てて俯いたけど、心臓がバクバクして、おじさんの「ふーん…。」って感想だけが、いやに耳に残った。
 突然、目の前の足がクルリと踵を返したので、そのまま帰るのかと、部屋を出ていく後ろ姿をホッとしながら見ていたのに、おじさんは納戸の扉を閉めただけで戻ってきた。
「え…?」
 出来ればこのまま帰って欲しいのに、戻ってきたおじさんは目の前にしゃがんで僕の顔を覗き込んでこう言った。
「なぁ、佳主馬。お前、男とヤッた事あるか?」
「へ?」

        ◇  ◇  ◇

 頭が真っ白になって、気が付いたらキスされていた。咄嗟に頭に浮かんだのは、師匠に言われた「如何なる時も慌てず、冷静に相手の行動を見極めろ」という言葉だった。
 身体を引いて下がろうとしたが、その動きを先回りされてしまい、左腕と首の後ろを押さえられ、逃げるのは適わなかった。
 ある程度は強くなったつもりでいたが、考えてみれば侘助おじさんは大婆ちゃんに育てられたんだ。武芸をやっていてもおかしくなかった。
 手をおじさんの胸に突っぱねて顔を逸らそうとしたが、この細い身体の何処にそんな力があるのか、首後ろを押さえていた腕をすごい力で背に回され、あっという間に大人の力を前に身動きがとれなくなった。
 どうしよう…。
 何とか逃げられないかと、周囲に視線を巡らすが、手に持って殴れそうなのはパソコンだけだった。
それさえも腕を折り畳んだ状態で抱き込まれているので、手に取るのは難しそうだ。
「……っ!」
 逃げ出す算段をしているのに、合わせられた唇の間から、舌をねじ込まれた。
 思わず拒絶の言葉を発せようと口を開いてしまい、口内にまで侵入を許す。
「んーっっ!」
 気持ち悪さに泣きたくなる。
逃げようにもガッチリ押さえられていて、身動きもままならない。おじさんの舌を噛んでやろうかとも思ったが、どのくらい痛いものなのか想像が付かず、怖くて出来ない。
 結果、今はじっと耐えるしか無かった。
「…………っ。」
 誰か助けて。師匠、母さん、父さん。………健二さん。
 健二さんの顔が浮かんだ時、「健二さんだったらよかったのに…。」自然にそう思った。
 そうか僕、健二さんとこうしたかったんだ……。
 それが分かった所で、今こうしている相手は侘助おじさんだった。
 自分の舌でおじさんの舌を押し出そうとして、逆にヌルリと絡め取られて鳥肌が立った。
 おじさんが触れているところにも鳥肌が立ってるのに、構わず口内を嬲られ続けた。
「………んっ」
 いい加減、目の端に涙が滲みはじめ、段々と息苦しくなってくる。
 苦しさを訴えようと何度もおじさんの胸を叩くが、拘束している腕は一向に緩まなかった。
 徐々に意識が遠のいて行くにつれ、不思議と嫌悪感も溶けるように消えていき、暖かな舌で口内をなぞられると気持ちよさにさえ震えた。
 身体に力が入らなくなって、指先まで痺れるような感覚に心地よさを覚えた頃、ようやく解放してもらえた。
 慌てて肺に酸素を取り込んで、浅い呼吸を繰り返すことに意識を取られていると、気が付けば床に寝転がって、おじさんに上から押さえ付けられていた。
「……ぁ。」
 目が合うと、もう逸らす事が出来ず、おじさんの手がゆっくりと僕の股間へと伸びていった。
「……っ!」
 そこに触れられて、ビクリと身体が跳ねば、おじさんは口の端を歪ませ「気持ちいいんだ?」と僕の耳元へ話し掛る。
 慌てて首を左右に何度も振るが、そこを弄られると、意識に反して徐々に堅さを増していく。
 何か言われるのが怖くて顔を背けると、剥き出しになった首筋に舌を這わされた。
「ひゃ……ぅっ。」
 思わず変な声が出て、慌てて両手で口元を押さえた。
「そうそう。変な声出したら誰か来ちゃうから…、しっかり押さえてな。」
 冗談じゃない。こんなところ、親戚の誰かに見られでもしたら…。背筋に寒気を覚えながら、必死で声を押し殺す。
 それをいい事に、どんどん際どいところを弄られるので、僕は声を殺す為に、ますます両手を使って口を塞がなければ、耐えられなくなってしまった。
「っ!…ぅぅ、ぐぅ……ん…ぅ…っ」
 首筋から鎖骨を何度も舐められ、性器をしごかれる。
 目が潤んで涙がこぼれ落ちそうになるが、「泣くもんか」と何度も歯を食いしばり、何とか堪えた。
「んん!…んっん…っ…!」
 それでもじわじわと下肢からの痺れに逆らえなくなってきた頃、タンクトップを捲り上げられて乳首を舐められた。
「ん…っ!―――っ。」
 ペロペロと舐められて、ふっ…と、息を吹きかけられる。
 冷たい空気の震えに、ゾクリと身体が痺れた。
「……ぅっ」
 過敏に反応するそこが温かい感覚に包まれたと思ったら、転がすように舌先で弄ばれた。
「んん…っ………ぅ…ぅ…っ。」
 ジワジワと沸き上がるおかしな疼きは、今はもう、ハッキリとした快感にすり替わっていた。
「んん…っ!んんぁ…………ぁ……んんっ…。」
 口を押さえる両手からも力が抜けていき、逃げ出すことはおろか、唇を噛んで声を噛み殺すので精一杯になってしまっている。
 覚えのある感覚が、腰から一気に沸き上がってきて
「………もぉっ……イク…っ。」
絞り出すような声で窮状を伝えたのに、扱う手は動きを止めるどころか、ますます促すように激しくなった。
「………やぁ、………や……ぁ…うっ。」
 頭が真っ白になるまで我慢したが、とてもじゃないが堪えきれず、おじさんの手の中で達してしまった。
 産まれて初めて、他人の手の中へ出してしまった事実にいたたまれなくなり、一気に現実が押し寄せてきた。
 僕は一体、何やってるんだ。自己嫌悪と恥ずかしさのあまり、いっそこのまま死んでしまいたいとさえ願う。
 我慢していた涙が、堰を切ったようにボロボロと零れだした。
「う……うぅ。」
「あっれ?泣くなよ。気持ちよかったんだろ?」
 言われると、余計、情けなさに拍車が掛かった。

 もう、どっか行ってくれ。何のためにこんな事するんだよ?聞きたかったが、嗚咽が込み上げてきて言葉にならなかった。
「………うぅ……っ!………ぅ?」
人が泣いているのに、おじさんの手は変なところを探ってきた。尻に潜り込み、こともあろうに…。
「うぁっ」
 濡れた指先で、穴を撫でられた。クルクルと塗りつけるように円を描く指先…。
 その手が濡れているのは、さっき俺が出した…。
「な……何?……なにするの?」
 気持ち悪さと不安から、思わず尋ねた。でも、おじさんからは「なーんだ。知らねーのか?」とニヤニヤしながら言われただけだった。
「知らねーんなら、教えてやらねーとな。」
「あっ!…………っ。」
 その台詞を聞いた後、身体の中に”何か”が入ってきて、ゆっくりと内部を掻き回す…。
「……ぅ。」
 それが指だと分かったときは、あまりのショックに信じたく無かった。そんな所に、指を入れるなんて…。
「ゃ………やだ。」
 身を捩って逃れようとしても、すぐに逃げられなくされて、更に奥深くまで探られる。
「……ひゃっ……ぅっ。」
 行き交う指が、ゾクリとした感覚を残す。
「ん?……ここ?」
「い……痛ぃ…。」
 声が上がったところを探られるが、同じ所を強く押されると鈍い痛みが走った。
「息、吐いてみな。」
 どうして言うことを聞いてしまうのか、言われた通り息を吐くと、押す力を緩めてくれるので楽になった。
「……ぅ。」
 楽になって安心したところを、また強く同じ場所を強く押される。
「痛…痛いってばっ。」
「教えたろ?息を吐くんだ。」
 抗議しても帰ってくるのはこんな台詞だった。仕方なく息を吐くと、また押す力が緩められるが、すぐにまた同じ所を刺激される。
 訳も分からず、ただ息を吐くときだけは楽になれたので、何度かゆっくりと息を吐いているうちに、段々そこからジワジワと変な感覚が沸き上がってきた。
「気持ちよくなってきたか?」
 そう言いながら、再び首筋を舐められる。
「やあ…ぁあっ……っ…!…………はぁぁぁ…っ……。」
 ほったらかしになっていた性器を再び握られ、優しく扱われ始めた。
 身体のあちこちから変な感覚が沸き上がってきて、訳が分からなくなってくる。
「やぁ……っだ!…な……ん…か、……変に…なるっ!」
「―――――なっちゃえよ。」
 低い声で甘く囁かれ、ゾクリとした。まるで「変になっちゃっていいよ」…って、誰かに許可でも貰っかのように安堵した。
 なんでそんな気分になるのか分からなかった。
こいつにこんな目に遭わされてるのに…。
「やぁ………ぁぁっ…あぁ…あ!」
 それでも身体は否応なく熱を持ち始め、少し触れられただけでもビクビクと反応してしまう。
僕の身体なのに、僕の身体じゃないみたいになった。
「目ぇ潤ませちゃって、かっわいいねぇ…。」
 ………目?
 言われてみれば、随分視界がぼやけてる。でも、それ以上何も考えられない。………スゴク気持ちいい。
「ぁ…あ…ぁぁ…っああ…っ!……」
 何処に触れられてもジンジン痺れて、その感覚だけを追っていたのに、急に下からの圧迫感を感じた。
「……ぅっ。」
「指、増やしたの分かる?」
 急に増した圧迫感はそれか…。コクリと頷くとさっきと同じように抜き差しを始められた。
「やあぁ…っぁあぁあ……っ…!………ゃあぁぁ…!あ…………っ…。」
 さっきまでとは明らかに違う。一本は真っ直ぐ奥深く突いて、もう一本は折り曲げて角度を付けてあった。
「ぁ……ぁ…っあぁ…っ!……っ………ひ…い…ぁ…っ!ああぁあぁ…………っ…!っ」
「声、大きいよお前…。」
 意識から遠いところで、そんな声を聞いた後、唇が塞がれて、舌を絡め取られた。
「ん……、……ふぅっ」
 半ば反射的にその舌を自分から迎えに行き、自ら絡めた。
 不思議とそうすればもっと気持ちよくなれるのが分かったから。
「ん……ん……っ…!…………んっぅ………………っ」
 入口の圧迫感がより強くなって、3本に増やされたのかな?…と、回らない頭で理解した。
「ん…んっ……っ…………ふ……ぅ………ぁ…っ!…っ…」
 何度も何度も指を行き交いされ、その間も体中を愛撫されていた。
 もう、気持ちよさを追うことしか頭くて、おじさんの首に手を回してしがみついた。
「……ぁ…!っ…、………あぁ…んん…んっっ……ぁっっ。」
 声が漏れるのはどうしようもなかった。それでも大分トーンを落とす事は出来てると思う。
 誰かがここに来て邪魔されるのが嫌だった。もう、止めて欲しくなかった。
「……ぁ…っっ、………あぁんっ………あっ!やだっ。」
 突然、全部の指が引き抜かれて、思わず抗議の声を上げる。おじさんを見上げると、「もっとして欲しいか?」って聞かれた。
 コクリと頷くと両膝裏に手を添えられ、脚を広げられた。
 恥ずかしかったけど、早く触れて欲しくて……、恥ずかしいのは目を閉じて我慢しながら待つことにした。
「………!……痛っ!……な?」
 突然、激痛が走り、慌てて確かめようと目を開けると、おじさんの顔が目の前にあった。
 後口は、引き裂かれるような激痛を伴ったままだ。
 問うような視線を向けると、おじさんは僕の手を取って痛みの元へと導いた。
 手で探ると、そこには何かが刺さってた。熱く脈打つソレがおじさんの男根である事は、もはや疑いようのない事実で、僕がそれを確認したと見るや否や、ゆっくりと更に奥深くソレが潜り込んできた。
「や…あっぁ…!…っ…痛ぃ…!やぁ…めっ………。」
「ほら…息吐いて力抜いて、『この太さ』が入ってくるんだ。」
 はっ…はっ…と、必死で息を吐いて出来るだけ力を抜く。無理のある大きさに身が竦み、身体が裂かれる恐怖に指先が冷たくなっていく…。
「さっき、気持ち悦かったろう?これで擦ったら、もっと気持ちよくなれるんだぜ…。」
 ……もっと気持ちよく?
 その言葉に、思わず身体から力が抜けた。
「……ぁっ、………いっ……つうぅっぅ。」
 それでも、やっぱり痛い……。
 そう思うのに、指なんかよりずっと太くて固いモノで、さっきみたいにされたら、どうなるんだろう…?
 痛みに耐えながら、僕はそんな事を考えていた。
 さっきのゾクゾクした感覚をまた味わえるのかと思うと…、僕は何処かで期待していた。入口はヒリついて痛いままなのに、今はもう挿れて欲しと思うようになっていた。
「……ぁ…っ……、………あぁあ…っん…っ………ぁ……っ。」
 指の隙間から、おじさんのが少しずつ中に入っていくのが分かる。入って行く分だけ、身体の奥まで侵入しているのが内部の感覚で分かった。
 いよいよ手が邪魔になったのか、手をどけられると、やがておじさんの腰が僕のお尻にピッタリと合わさって最後に強く突かれた。
「……ぅ、………あ。」
 ―――全部、入ったんだ。