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【まだ負けてない】

 段々と健二さんの顔が近付いてくる。最初は(何をするんだろう?)と不思議に見ていたが、流石に目の前に顔が迫るとその意図を察する。
「………」
 ちょっと待って…。そう言おうとしたのに、なかなか声が出なくて……、やっと口を開きかけたときには、キスされていた。
 触れるだけのキスを、角度を変えて何度も繰り返されて行くうちに、体中の血が沸騰するかと錯覚するほど熱くなる。
 真剣な顔をした健二さんが、ゆっくりと身体を起こして僕の上に覆い被さるので、自然と見上げる形になる。
 これってひょっとして…組み敷かれたって状況なんだろうか?
 心臓が壊れるんじゃないかと思うほど、ドキドキと耳元で鳴り響いてる。
 ゆっくりと再び降りてくる唇を、今度は目を閉じて受け入れた。
「ん…」
 唇を舌で辿られた後、差し込まれた舌で口の中を舐められる。
 初めての感覚に体が震えた。
 こちらからも舌を伸ばすと、健二さんは優しく触れてくれて、それだけで胸がいっぱいになった。
 今まで健二さんのことは『お気に入りのお兄さん』ぐらいだと思ってたんだけど、本当は、こういう意味で好きだったんだって、その時初めて自覚した。
 健二さんの手が体中を撫でて、どこを触られても気持ちいい…。深くキスしながら抱きしめた僕の身体を優しく撫でてくる健二さんの手が気持ちよくて、もっともっと触ってて欲しいって思ってしまう。
「ひぁ…っ。」
 健二さんの唇が首筋を這うと、くすぐったいようなもどかしい感覚に堪らなくなる。
 タンクトップをたくしあげられ、乳首を弄られたときは「そんなとこ触ったって、女の子じゃないのに」って正直思ったのに、触れるか触れないかの増える指先で刺激されていくうちに、段々堪らなくなってきた。
「あ………はぁ……っ」
 自然と息が上がるくらいになった頃、首筋から鎖骨を舐めていた舌が胸に吸い付いてきた。