阿部と三橋の意思疎通

 ねむ…。
 フワフワと髪が何度も浮くような感覚に、意識が浮上した。

 寝ている俺の髪を、誰かが触ってる…。
 誰か…なんて、隣で寝ていた三橋に決まってんじゃねーか。

 いつもはお前の方が寝ぼすけなのに、珍しいな。
 少し笑うと手が止まった。

 もうちょっと触ってて欲しかったのに。
 そんな事を考えていると、また暫くして髪がフワフワと浮き出した。


 お前ってさ、俺のこと一度も嫌がった事ねーよな。
 不満とかねーの?……俺のこと、嫌いじゃねー…よな?

 ふいに不安に駆られて、目を開けようとしたら


 キスされた


「おわっ!……ア……アベ……阿部君」
 ビックリして目を開けると、三橋の方がよっぽど驚いて、真っ青な顔をしながら固まってしまった。

「……たく、お前はよ〜……」
「ごめ……ごめんなさい。あわわわわわっ」

 ………あわわ、じゃねーよ…。
 すげぇドキドキして、顔の熱が上がっていくのが自分でも分かる。

 三橋は俺が怒ってると思っているのか、益々挙動不審になっていく。
 ああっもう!なんで、いつもこう伝わらねーんだよっっ!

 イライラを募らせていることだけはビシバシ伝わるらしく、三橋は「息してるのか?」と、心配になるほど身体を硬直させて固まってしまった。

 くぅぅ…余計な事ばかり察しやがって…。肝心なことは伝わらねぇ…。
 どうすりゃいいんだよ。


「……」


「…………」



「…………………」



「好きだ!!」
 俺が叫ぶと同時に、三橋はビクーーーーーッッと飛び上がって、後ろに尻餅を付いて着地した。



「う……うぉっ??」
 くぅっ…何でいつもこうなるんだよ。今日は珍しく三橋から意思表示があったのに。
 嬉しかったのに!

 たまらず反対側を向いて、三橋に背を向けた。
 

「オ……レ……オレも…阿部君……すき…だっ」
 たどたどしく伝えてくる三橋に、今すぐ抱きしめてやりたい衝動が走った。
 でも……今はダメだ。


 か……顔がニヤけて……、こんな顔見せらんねぇよ…。


「ご……ゴメンナサイ」
 うぁ……、怒っていると判断されたらしい。

 なんで、こう…いつも上手くいかねーんだろ……orz



別の話を書いていたら、ふと浮かんできたので書いてみました。
3日遅れの阿部誕って事で…

2008.12.14