ポッキーとおこらえてねぇよ!

 コンビニの袋を持ったまま、ブロック塀の溝に足をかけ、塀の上へ一気によじ登る。
 塀沿いに設置された物置の屋根へ移動すれば、榛名の部屋の窓の下。

 窓を叩くと、俺に気付いた榛名が「こんな時間に、どうした?」…なんて言いながら、出迎えてくれた。
 1階の庇に、足をかけて部屋に上がり込むのは、子供の頃から慣れ親しんだルートだった。

 2月15日、深夜1時―――。

「チョコレートを渡してなかったからね」 
 優しいキスを落としながら、榛名を抱きしめた。
「コンビニ行ったんだけど、これしか買えなかったよ」
 袋からポッキーを取り出して榛名に差し出した。
「サンキュ」
 軽く笑いながら受け取ろうとした、榛名の手が触れる前に、ポッキーを引いて渡さなかった。

「……んだよ」
 眉間にしわを寄せて、文句を言う姿も可愛いね。
「バレンタインに間に合わなくてごめんね。」
「お?……おぉ」
 両親が眠ってからしか家を抜け出すことが出来ず、結局こんな時間になってから、榛名の家に来ることになってしまった。
「バレンタインに間に合わないなんて、台無しだよ…」
「………いいじゃねーか、そんなの何時でも」
 あいかわらず、榛名は記念日に執着がない。
 まぁ、そんな所も全部含めて好きなんだけどね。

「榛名は?」
「?」
「俺にチョコ無いの?」
「え!………っとぉ……。」
 困ってる困ってる…。内心笑いながら「くれなら、変わりに食べさせて」って言ってみる。
「お…俺が?」
「そっ!」
 すると榛名は、ポッキーの箱を受けとると、袋を破って、俺の口元へとポッキーを向けてくる。
 俺が少し困ったようにして食べないでいると、榛名はポッキーを自分の口に銜えて差し出してきた。
 これも違うのか?って声が聞こえてきそうな表情と、首を傾げる姿が可愛くて仕方がない。
 ぱくっと、差し出されたポッキーの先端を食べ始めると、近付くにつれ、榛名は目を閉じてキス待ち顔になってる。
 キスをしながら、2人でベッドに縺れ込むように押し倒す。
 2人分の重みに、ベッドがギシリと悲鳴を上げる。
「好きだよ」
 榛名を見つめながらそう言うと、途端にまっ赤になって顔を背けてしまった。
「わ…、わぁーってるよ」
 照れる仕草も堪らない。
 俺がメガネを外すところを、榛名はそっと盗み見る。
 その時の顔が榛名は大好きなのも、ちゃんと知ってる。
「一階(した)…、家族…。」
「知ってる。だから榛名、声我慢してね」
 ちゅっ…と、耳朶を喰むとピクリと反応を返す。大人しくしてるのは、OKの意味に取っていいんだよね?
 喰んだ耳朶を舐めながら、耳の穴へ舌を滑らすと、身を捩らせて逃れようとする榛名を許さず、更に奥へと舌を滑らす。
「んっ……」
 咄嗟に口を手で覆い、榛名が声を潜ませた。
「そうやって、声立てないでね」
 シャツの裾から手を忍ばせ、榛名の胸を温めるように愛撫する。
 首筋から鎖骨のラインを舐めあげると、ゾクゾクと感じているのが伝わってきた。
「ふぅ……んっ」
「榛名は本当に、悦い顔するね。もっと、俺に見せて…」
「んぅっ!」
 下肢に手を伸ばすと、榛名の身体がビクリと跳ねた。
「んぁ………んんっ」
 布の上から触っただけなのに、反応が良すぎて楽しくなる。
「ふっ…あぁっ!」
 下着の中に手を入れて直接握り込むと、榛名の背が綺麗に弓形にしなった。
 形を変えていくソレを扱っていると、榛名自らズボンと下着を脱ぎ始める。
 手伝ってやれば、奥でヒクついて刺激を待っている蕾へ容易に手が届く。触って欲しいんだね、榛名。
「触れて欲しい?」
「……だよっ。…はやっ……く」
 頬を染めて身体を差し出してくる姿が、たまらなく情欲を煽る。
 指を近づけ、一瞬だけ触れると、そこが赤く開いてキューっと締まる。物欲しげな、淫らな動きにゾクゾクと煽られる。
「榛名に欲しいって、言って欲しいんだよ」
「必要ねーだろっ」
 まったく、強情だね榛名は。こんなにも全身で欲しいって言ってるくせに…。

 ふと、さっきのポッキーが目の端に映った。
「?……あっ………ぁぁ?なにっ」
 突然襲われた異物の侵入に、榛名が狼狽える。
 始めての感覚に何が起こっているのか分からないんだろうね…。

 俺は、一本のポッキーを深々と榛名に埋め込んでいた。
「やっ……冷た………堅い。なに」
「何だろうね」
 笑って榛名から身体を起こして、何が埋め込まれたのかを見せてやった。
 榛名の目が、驚愕と怯えに見開かれていく。
「何やって…」
「だって、榛名。俺のこと欲しがってくれないから、他のモノでも欲しいのかと思って」
「んなわけ、ねーだろ!」
 悔しそうに起こってみせるけど、震えて耐えるしか出来ないんだね。……可愛いだけだよ。
「でも、もうチョコが溶けてきたよ?随分、内部は熱そうだね。」
「てめ…っ」
「俺が欲しいって、言ってよ榛名」
 優しく強請ってみたのに、榛名は拒絶を表して顔を背けた。
 ……ふーん。そういう態度なんだ。


「ぁ……っあぁ、……っ」
「榛名、声我慢しないと…。家の人が気付くよ?」
 大きな声が漏れ始めた榛名を、涼しい顔で注意する。
 榛名のそこへ、ポッキーを次々と一本ずつ入れていく。チョコが溶けてシーツまで汚しそうになったので、榛名が風呂上がりに放置していたバスタオルを腰の下に敷いてやった。
 溶けたチョコがポタポタと零れ、バスタオルにシミを作った。
「秋……丸っ」
「何?」
 されるがままになっていた榛名が、やっと口をひらいた。
「中…、柔らかくなってきた……」
「え…」
 ふやけたかな?
 仕方がないので、榛名に再度促した。
「…じゃ、お強請りできるよね」
「…………」
 榛名は少し考えた後、俺の首に腕を回して、消え入りそうな声で俺を求めた。
 全部引き抜いてやり、榛名へ埋め込んで行く…。こっちも、もう限界だった。
「あ……ぁっ……あああっ」
 お互い待ちわびた刺激を貪り、夢中で腰を振る。
「声デカイよ…」
 そう言うと、榛名は着ているトレーナーをたくし上げて、口に銜えた。
 くぐもった声が室内に響き、露わになった胸を愛撫しながら、何度も強く腰を打ち付けた。
 俺の動きに榛名の腰も淫らに合わせ、蠢く内部が絡みついてくる。
「も、……イク。榛名」
「んぅっ……んっ」
 その声に呼応するかのように榛名は痙攣し、締め付けられた内部に搾り取られるように中へと出した。
 勢いよくベッドに沈み込むと、ベッドに立てかけてあったバッドが倒れて、バットにもたれかかるように積み上げられた雑誌の上に乗せられていたトレーニング用の鉄アレイがゴトリと落ちた。

 音はでかくなかったが、確実に響いただろう物音に緊張していると、階下でドアの開く音がした。

 俺も榛名も、途端に凍り付くように硬直して、下に敷いていたバスタオルで慌てて始末する。
 やばい!階段を上がってくる音がする。

 確実にこの部屋にやって来るに違いない。慌てて服を整え、上着をひっつかんで窓から飛び出すときに、榛名のシーツがチョコやらなんやらで汚れてしまっていることに気付いた。
 でも、もう今からではどうしようもない。部屋を飛び出すと、静かに窓を閉めて身を潜めた。

 服を着たままだったので、どうにか間に合った。榛名もトレーナーを着たままだった。
 バットをけ飛ばして鉄アレイ落ちたことを榛名が説明しているのが聞こえる。
 眼鏡を忘れてしまったが、こうなっては俺に出来ることはない。

 仕方なく荒い息も整わないうちに、榛名の家を後にした。

    ― 朝 ―

「榛名、あの後どうなった?」 
 朝練の時、榛名に聞いてみると、無言で眼鏡を返してくれた。
「ああ、ありがとう」
 受け取って眼鏡をかけるが、どうもむくれているように見える。
「どうもなってねーよ」
 答えてはくれたが、なんだか機嫌悪い。部屋を片づけて無いのは榛名だけど、昨日事はやっぱ俺にも責任の一端が有るわけだし。
「でもさ、シーツとか汚れてただろ?あれどうした?怒られただろ?」
 心配して尋ねるが、榛名はまっ赤になってくる。
 怒っているのか…照れているのか、表情では分からなかった。
「はる…」
「………………るせ。」
「え?」
 小さくて聴き取れなかった。聞き返す俺の顔を、榛名がキッと睨んだ。
「おこらえてねぇよ!」
 それだけ怒鳴ると、榛名は足早にグラウンドへ行ってしまった。

「ちょ……榛名ぁ!」
 その後、どれだけ聞いても榛名はその後どうしたのか教えてくれなかった。
 普段なら、汚したら俺が綺麗に洗って後始末してやるのだが、榛名にソレが出来たとは思えない。
 でも、アレをそのままにも出来ないだろう。
 多分、親がもう一度寝静まってからコッソリ洗ったんだろうな…。

 ごめんね、榛名。



榛名受けオンリーイベント「おこらえてねぇよ!」合わせのアキハルペーパー用に書きました。
2月15日の話で、榛名の台詞で「おこらえてねぇよ!」と言わせたことで、珍しく自分で満足した話になりました。

書いてて、凄く楽しかったですヽ(´ー`)ノ

2009.2.15