兄貴の恋人

「や…っ」
悲鳴にも似た小さな拒絶。

「嫌、じゃ無いだろう?こんなにして…」
起立して蜜を滴らせるそれを愛おしげに指を絡める。
そこを刺激されると男のサガで逆らうことが出来ない。
「……っ」
必死で声を押し殺して快楽に耐える。

「無理しなくていいのに…」
「ば…か、やろっ」
罵倒したいが耐えるだけでいっぱいいっぱいだった。

なんでこんな事するんだよ…
良守の脳裏に幼い頃の記憶が蘇る。





良守6歳
その日、お昼寝をたっぷりしていた良守は、普段起きるはずのない時間に目を覚ます。
隣に寝ているはずの父が居なくて、家の中を探し歩いていた。

祖父の部屋に明かりがついており、話し声が漏れ聞こえる為、良守は嬉しくなって部屋へと近づく。…が、近づけば近づくほど、何やら祖父の機嫌が悪そうなのが伝わってきた為、良守はそろそろと音を立てないように声が聞こえるところまで近づいていった。

「それは、できん」
「お父さん、そんな…正守は今までずっと跡取りとして修行をしてきたんですよ?」
父さんとお爺ちゃんがなにか言い争ってる?
良守はそっと耳をそばだてた。

「修史さん。それはワシもよく判っておる。しかし、方印を持つ正当後継者が現れた以上は…」
「そんなっ!」

「父さん」
二人の言い争いを遮る、静かな兄の声。

「判っていた事ですから。」
「すまんな。正守」
「いえ…。良守の方印を見たとき、いずれこうなる事は判っていましたから…」

瞬間、良守は冷や水を浴びたような衝撃に打たれた。
俺のせい?兄ちゃん修行頑張ってきたのに、俺のせいで後継者になれないの? 






その時、俺は兄貴にとって邪魔な存在でしかないことを思い知った。
兄貴が怖かった…。
優しくて、頼りがいがあって大好きだったのに。

以来、兄が怖くて距離を取るようになった。
家を出ると聞いたときには、申し訳なく感じながらも心底ホッとしたものだ。

兄に見つめられるのが怖かった。
冷たく拒絶されるのが怖くて…自分から離れた。

なのに…今日
なんでこんな…
「あ……っえ?やっ…」
兄貴の指が信じられない所に侵入してくる。
「ちょ…っ何してるんだよ。やめろよっっ」
焦って身を引くが、圧倒的な体格差で簡単に押さえつけられ、逃げることは適わなかった。

俺は半ば正気を失いかけているような状態なのに、容赦なく内部を指で蹂躙する。
ビク…今、何か電流が走ったような気がする。

俺がそう思ったところを、兄貴は重点的に弄るんだ。
「や……あっあっ」
ナニコレ…
身体が痺れて…何か変。
「もっと素直に感じなよ」
ふざけんなっ…でも、これが感じてるって事なのか?
良くわかんねぇ。
ざわざわ痺れて…なんか変
「ひぁっ」
!何だ今のうわずった声。俺の声なのか?
兄貴が俺が変になるところをグイッて押したんだ。優しく触れては時々付けられる強弱に、俺はいつの間にか踊らされていた。

「や…あっ…ひぅんっ…」
「そんな可愛い声だしてたら、我慢できなくなるだろ?」
自分の出した声にびっくりしてるのに、追い打ちを掛けるようにそんなことを言われる。
「うるさっ………あんっ」
文句を言おうとしたのに急にソコが更におかしくなって、思わず声が漏れる
「指、増やしたんだよ。判る?」
「もぉ…やぁ……離せっ」
耐えきれなくなって肩を押すが、何の抵抗にもならなかった。

「悪いけど、離す気はないよ。それなりの覚悟は決めてきてるからね」
覚悟?覚悟って何の?
薄れ始める意識の中で、その言葉だけが耳に響いた。

足を持ち上げられたので、離してくれるのかと兄を見た。
「なっ…」
俺は、見てしまったことを後悔した。起立したソレを埋め込もうとしているのだ。
指が引き抜かれ、更に身体を折り曲げられる…

「や……やだぁ…離してっ」
俺はなりふり構わず逃げだそうとしたが、体格の良い兄に体重を掛けて押さえつけられては逃げられるはずもなかった。

「ひっ…」
ソレがあてがわれる感覚に、俺は恐怖に全身を強ばらせた。
「良守、力抜いて」
抜けるかっ
絶対に嫌だと思った俺は、益々力を込めて固くなる。
こうしていれば、兄貴だってそのうち諦めるはず。絶対力なんか緩めるもんか。

俺が頑張っていると、兄貴が俺の頬を優しくなでたてくる。
なにしてんだろう?と思っていたらキスしてきた。
うわっ何すんだよ。さっきも俺のファーストキス奪ったくせに。
ちゅっちゅっ…とキスしてたのに、そのうち口を付けたままにして、俺の口をふさぐんだ。

何考えてるんだコイツ。
俺は鼻で息をして何とか耐えていると、今度は鼻をつままれた。
?!!!
んっんっ何とか首を振って逃れようとしたが、鼻がつままれているのでそうも行かない。
「んっんっ」
苦しいのを抗議するが離してくれそうもなかった。
耐え切れず口で空気を吸い込もうとすると、兄貴の舌が俺の口の中に差し込まれた。
「んんーーーっ」
鼻は離してもらえたが、深い口づけに呼吸もままならない。
苦しっ…

これ…ディープキスって言うヤツだよな…兄貴の舌が優しく絡みついて、頭の芯が痺れるような心地よさを覚える。
「んっ」
鼻から抜ける吐息に色が籠もる。

「はっ…ぁ……あっ!!」
下から兄貴が侵入してきた。
さっきチラッと見たときの兄貴の大きさを思い出す。
ぜってー無理っっ。
「うわっ…やっ、やだぁぁぁっっ!!」
俺はあまりの恐怖にパニックを起こした。

「良守!」
名前を呼ばれて我に返る。
「あ…」
状況を思いだした俺は
「む…無理」
とだけ伝えた。

兄貴は俺のことを見つめてたから、俺が兄貴を見ると見つめ合う形になる。
「良守…」
俺の名を呼ぶので、「何?」って目線で問い返した。
「目つぶって」
言われるままに目を閉じる。
うわ…

またキスされた。
さっきみたいにディープキスだ。

キスは嫌じゃないな…なんか気持ちいい。
「んっ……ふっ」
俺がキスに気持ちよくなっていると、兄貴が腰を進めようとしてくる。
「んうっ…っ」

兄貴は止めるつもりが無いみたいだ。
俺は力を抜き、仕方がないので出来るだけ兄貴に協力する。

そうは言っても、やっぱり怖くて身体は少し強ばっていた。このまま力任せに突っ込まれたらと思うと恐ろしくて、さいごの最後で力を抜けないでいた。

兄貴は手を伸ばして半立ちで震えていた俺を包み込み、優しく扱いだした。
キスされながらソコを扱われるのがこんなに気持ちいいなんて、今まで考えたこともなかった。
快楽に引きずられるように身を任せるうちに、いつしか余計な力が抜けたのか、ゆっくりと兄貴が腰を進めてきた。

きっつ…
正直ギリギリいっぱいだが、兄貴が本当に俺を気遣ってゆっくりと事を進めてくれるので、何とか耐える事が出来た。

俺、本当におかしくなっちゃってる。なんでこんな事、許してるんだろう。
いや許した覚えはないが、今こうされてる事をなんとなく受け入れてしまっている。
きつくて、苦しくて、辛いのに…なんで、されるがままなんだろう。

やがて、すべてを内部へと納めきった兄貴が「ふーーっ」と息を付いて
「大丈夫か?」
と声を掛けながら俺の頭から頬にかけて撫でてくれる。
「うん」
ああ、そうか。
兄貴がこんなに優しいから、俺…

「出来るだけ、早くイクから…」
「うわっ……あっ……あっ」
身体に与えられる衝撃で、動けなかった。

痛い…。ぎりぎりなソコを凹凸のある肉の棒が出入りするのだ。
ただ、大人しく耐えるしかできないが、奥を擦られると同時に、表現しがたいほどの快感が襲ってくる。
「あ………っ、あ、や………やぁ…だっ…ぁ」
「凄いな良守。見ているだけでもイキそうだ」
兄に、思うがまま腰を揺すられ、最初ゆっくりだった兄貴の動きが忙しくなり、やがて俺の内部で達したようだ。

「はぁ…はぁ…」
終わった…。以外と早く解放されたのでホッとする。
兄貴を見るとなんだか嬉しそうに見える。
そっか。これでよかったんだな…

俺がそんなことをぼんやりと考えていると、二人を繋ぐ場所が、ぐちゅり…と淫靡で粘着質な水音を立てる…
うわぁ…急に、今行われた行為が恥ずかしくなってくる。
あまりの恥ずかしさに俯くと、兄貴が俺の耳に口元を寄せてきた。

兄貴の身体が近づいて、触れ合う肌の羞恥に耐えるだけでも精一杯なのに、次の言葉で時が止まった。
「これで、滑りが良くなったから…次は気持ちよくしてやるな…」

「え…?」
兄貴はそのまま俺の首筋に舌を這わせながら、俺の乳首とか弄ってくる。
「さっ…さっきので終わり何じゃ…」
「まさか、あんなのでオシマイなわけ無いだろ…濡れてないとお前が辛いから一回イッただけだよ」

「あっ…」
兄の愛撫に思わず声が漏れると「今からたっぷり可愛がってやるよ」情欲の色を乗せた声で囁かれた。
さっきチラチラと見え隠れした快楽が、これ以上襲ってきたら…俺はどうなってしまうのだろう?俺は完全に兄貴に捕まってしまって、もう逃れられそうも無かった。

そして俺は心のどこかで期待しているのだ。
あの一瞬だけ垣間見る事を許された快楽を…また味わいたいと。




「ひぁっ……あっ……あっ……はぁぁっん」
掠れた声が耳に届く。
自分の今の状態が信じられなかった。
まるで本能のままに貪り合う獣のようだ…

何度となく突かれた内壁は、そこが神経そのもののように、些細な刺激で良守の思考をすべて奪いつくす。
「あ……あっ………ぁ」

気づかず流した涙を兄の舌が拭う。
「好きだ…」
「え?」
俺が目を剥いていると、兄はプッと笑って
「そんなに驚くことか?」
って聞いてきた。

「え?だって…」
ずっと疎まれてるんだと思ってたのに。

「俺はずっと、お前のこと好きだったよ」
確かに、確かめたワケじゃなかった。
でも、だからといってこんな関係望んでたわけじゃない。
「じゃ、何で無理矢理こんな事すんだよ。」

「もう、我慢できそうになかったんだよ」
「な…」
「もう最近なんか、良守殺して手に入れたいとか思い始めてさ、あ、こりゃやばいなって」

「さらっと言うなよ…確かにヤバイだろそれ…」
兄貴の言葉に俺は青くなった。
「だから、どうせ受け入れられないのなら、殺す前にヤッとこうかと思って」


「……ちょっと待て。それは話を総合すると俺はこの後、殺されちゃうわけ?」
「うーん。ま、そのつもりだったんだけど…」

そんなあっさり言うなよ…
「良守があーんまり気持ちよさそうだからさぁ。どうかな?このまま付き合ってみない?」


「………え?……いや…ちょっと待て、それは付き合わなきゃ殺しちゃうぞって脅迫なのか?そうなのか?」
「あっはっは。その通りかもね。どうしよっか良守」

どうしようかって…
「俺のこと嫌い?」
「う…」
「嫌いならこんなに気持ちよくならないよね?…って思ってるんだけど?」
こ、ここは俺がそれを答えなくてはならないのか?
つか、どうなの俺?兄貴と付き合うの?
すげぇ抵抗有る。
俺が考え込んでいると、兄貴はこんな提案をしてきた。
「じゃあさ、こうしよっか」
「?」
「また、気持ちいい事しよう」
「へ?」

「気持ちよかったろ?」
俺はちょっとだけ迷って
「………うん」
と、返事をした。
「じゃ、付き合うかは保留にして置いて、またしよ」
「え?えー?…あー。……えーと」
兄貴が俺を見つめてる…
「うー…うん。」
何か信じられねー。数時間前はキスすらしたこと無かったのに。
つか、兄貴がこんな事したいなんて考えも及ばなかった。

でも、兄貴がなんか嬉しそうだから…
まぁこれで良いかなんて思ってる。


■■■■■


一ヶ月後

「んんっ………う、……あっ」
あれから何度と無く肌を重ねるようになっていた。
こうされてるのは、とても気持ちよくて…
「良守ってさ…俺以外の人ともこんな事してるの?」
え?
まったく予期しなかった突然の質問に驚く。

「なっ…んなわけ、ねーだろっ。こんな事してくるのはお前だけだ」
「ふーん。」

「な…なんだよ。てか、喋るなら触るの止めろ」
俺が少し怒っているのに、兄貴は俺の肌に滑らせる手を止めることがなかったので抗議した。
…が、兄貴は少し笑って一言。
「それは、光栄だな」

………よく素面でそんなこと言えるなコイツ…。こっちが恥ずかしいっつーの
「俺しかいないならさ、そろそろ認めて欲しいな」
「?……なにを?」
どうも兄貴の真意が読めない。それとも、愛撫に気を取られているうちに、なんか聞き逃したのかな?
「俺と付き合ってるって」
「えぇ?!」
「そんなに驚かなくても…もう、良守の身体で俺が触れてない所なんて何処もないんだよ?48手も殆ど試したし…」
うう…恥ずかしいことを思い出させるなよ。

「それとも、良守って付き合ってもない相手でも、こんな事するんだ?」
「なっ…そんなわけないだろ」
貞操まで軽く見られて、俺は即座に否定する。
「じゃ、こんな子とする相手は特別?」
「え?あ…うー………うん」
なんかハメられてないか?俺

「じゃ、恋人って認めてもらわないとな」
「え?えー??」

兄貴が俺を見つめてる。この流れだと俺が何か言わないと行けないみたいだ。
「俺と良守って何?ただの兄弟?」
「た…ただの兄弟とこんな事するわけないだろうっ」

「じゃ、恋人同士で良い?」
「こ…こここっっ恋人どおしぃ???」
俺は面くらったが、兄貴に「違う?」と聞かれると否定できなかった。

あ…兄貴の顔が近づいてくる。チューする気なんだな
俺は、少し迷ったけど、兄貴のキスを素直に受けた。
じゃー俺。兄貴の恋人になっちゃったのか…

これって承諾って意味になるのかな…
まぁ、よろしくって意味で…な…なんか恥ずかしいなぁ。もぅ。
俺は赤くなるのを悟られまいと平静を装ってみたが、どうも兄貴にはバレバレみたいだった。

やっぱ、なんか騙されてる気分。



「…ひぅんっ」とか言っちゃってヨッシーかわぃぃーっ
↑お前が言わせてるんだろ

おっかしいなぁ…今回は優しい桃まっさんを目指したはずだったのに…
そもそも、この話書く前に用意したプロットは↓これ。

タイトル「冷たい声」
7歳の良守は聞いてはいけない話を聞いてしまう。
自分が正当後継者だから正守には跡を継がせないという繁守と正守との話。
冷たく名前を呼ばれるのが怖くて、兄におびえて暮らす良守。

ある日兄に抱かれてそれでも惹かれていく自分に流されていく。
両思いなのに気が付いて救われるが自分からは気持ちを伝えることが出来ない。
口ではどうしても言えなくて、自分から正守に口づけて態度で示す。

正守がやっと呼んでくれた声はとても優しい声だった。


出来上がりの話と違いすぎるw
でも、出来上がりの方が面白くなったと思わない?ドキドキ

しーーーーーーーーーん。
…………出直してきます。しくしく

2007.6.17