だから…

付けられたときは朱色だった跡が、今は汚い茶色に変わってる。

なかなか消えないな…
『俺の所有物って印が消えない内に戻ってくるよ』
兄貴の言葉を思い出して赤くなる…そろそろ消えそうだけど…何時来るんだろう。
でも、所有物ってのは否定しないとな。俺は、誰のものでもなくて、俺だけのものなんだから。物じゃない…
「良守。早くしないと時音ちゃんが出かける時間だよ」
「あ、すぐ行く」

慌てて歯を磨いて、制服を整える。
「行ってきます。」
時音の気配にあわせて家を出る…
少しでも一緒に居たくて身に付いた日常…
でも、今は以前のように時音を見ても胸が苦しくならない…兄貴のことばかり考えてるから

■■■■■

学校の帰り道。俺は走って帰っていた。
前は特別用事もないのにこんなに急いで帰ることは無かった。
でも、今は…もしかしたら兄貴が帰ってるかもしれないから…「お帰り」って言ってくれるかもしれない。

「ただいま」
玄関を開けて元気良く声を掛ける。
「うむ。お帰り」
しかし、迎えてくれたのは繁じぃで…。
「なんじゃ?良守。ワシの顔を見てがっかりするとは何事じゃ」
「え?がっかりなんてしてた?」
「たるんどるわぁ。かぁーつっ」
バリバリッ
じじいのチョップを結界でかわす。
「がぁっ」
じじいの手が結界に阻まれ、繁じぃの顔が苦痛にゆがむ。
「へへーんだっ」
俺は、するりとじじいをかわし、自室へ戻った。

スラッ
襖を開けると…心臓が止まるかと思った。
窓の外に兄貴の式神がいたからだ。
窓を開け、カラスの形をした式神を部屋に入れると兄貴の場所をつげてくる。
俺はすぐにお気に入りの服に着替えて、指定の場所に向かった。

そこに居たのは兄貴じゃなく、夜行の人だった。たしか、蜈蚣さんだっけ…
「お待ちしておりました。頭領にお連れするよう言われております。お乗り下さい」
そう言うとあたりを確認してから、乗り物(?)を出してくれた。

連れてこられたのは夜行の本拠地だった。
「お待ちしておりました。こちらへ。」
迎えてくれたのは綺麗な女性。さっき俺を蜈蚣さんが、刃鳥って呼んでたな…

「良守」
「あ」
影宮達だ。
「元気そうじゃん。今日どうしたの?」
「や…兄貴に呼ばれて」
「そか。又あとでなー」

「頭領。良守君をお連れしました」
「入れ」
兄貴の声で返事があると、刃鳥さんは障子を開けて、俺に中に入るように促した。
中に入ると、部屋には兄貴だけで刃鳥さんは障子を閉めて行ってしまった。

「な…何してんだよ」
兄貴が俺のパーカーの首を引っ張る。そこには、以前兄貴がこれが消えるまでに…と約束した印があった。
「よかった。消えてなかった」
変色したとはいえ、まだ結構ハッキリ跡になってる。
「こんなの。早く消えた方が良いに決まってるだろ」
「ふーん」
なんか恥ずかしくて、そう言うことを言ってしまう…
「そんなに俺に早く会いたかったんだ」
「へ?」
兄貴が嬉しそうに笑う。早く消えて欲しいって思ってたのは、やっぱこんなのもし見られたら困るからで……でも、兄貴を待ってたのは事実で…

ふと…刃鳥さんの顔が浮かぶ…あんな綺麗な人が側にいて、兄貴は何とも思わないのかな…。
「何?」
「えっ」
「何か聞きたそうだったから」
そう言いながら俺にキスしてくる。
う…なんで俺なんだよ。男が良いなら影宮とかもいるのに…

「兄貴が何考えてんのか、全然判んねー」
「俺も良守が何を考えてるのか判らないよ」
…え?
「誰だって相手の考えが読めるワケじゃない。良守に嫌われたりしないか、いつもドキドキしてるよ」
「う…嘘付け。何かいつも自信満々なくせに」
そんな話をしている間も、パーカーの裾から手を入れて胸や脇腹を愛撫する。
「そーんなことないよ。ほら、今、いい顔した」
「え?」
そりゃ、気持ちいいけど…
「ほーら、こうすると…」
兄貴の指が胸の突起に触れる…
「やっ……はぁんっ…」
「こーんな盛大によがってくれれば、不安になりようがないよね」
いつの間にかパーカーはたくし上げられ、兄貴の舌と指が這い回る。
「あ…あんっ。……はぁ。あっ」

「太股まで感じる?」
何処触ったって感じるよ。
とても口に出して言えないけど。気持ちよくしてくれるの知ってるし…。
こんな快楽植え付けられたら、もう逃げようがない…。

口づけられて首筋を吸い上げられると、自然と腰が揺れる…
たくし上げられてたパーカーは脱がされて、今は肘の所で腕の戒めとなっている。
邪魔だから脱ぎ捨てると、「積極的だね…」とわざわざ耳元で囁く。
「邪魔だから脱ぎ捨ててるんだろ」
「そうだね。二人が愛し合うためには邪魔だね」
「…お…おま…キャラクターが完全に変わってるぞ。だ…大体愛し合うってナニソレ?」
パニックになってる良守をみて、クックツ…と、のどの奥で笑う。

「あれ?自覚無かった?じゃー今やってるこれは何なの?」
そう言いながら俺の弱いところを刺激する。
「や…あんっ」
沸き上がる感覚に耐えようと、兄貴にしがみつく。
「良守気持ちいい?」
聞かれたことに素直に頷く。
そーゆー所が可愛いんだけどな。声だって…随分素直に鳴いてくれるようになったのに、もうちょっと甘えて欲しい。
こんなに素直に反応するのに…




「好きだよ」
すっかり自身を良守の中に納めきってから、荒く息を付く良守の手を取り、手の甲にキスをする。
「…」
その仕草を見ていた良守は、居心地悪そうに目線を泳がせた…。
「何考えてる?」
「え?」
俺の問いかけに、驚いたように反応する。
「今、何か考え込んでただろ?」
「なんで判んの?」
本気で不思議そうに聞いてる。いつものお前なら、くってかかって文句を言いそうなのに…

「お前のこと、いつも見てるから」
すると良守は顔を背けながら何かを言うが、十分に聞き取れない。
「?……良守?」
「…かよ」
「え?」
こちらが聞き取れないでいるのを理解したようで、暫くして良守の口が開いた。
「本当に俺のこと見てるのか?」
今度の声はハッキリ聞こえる。

「見てるよ。いつだって気がかりだから」
「そんなワケねーじゃん。だって…夜行とか仕事有るし、あと、なんか偉い所の幹部なんだろう?」
「そりゃ、仕事は忙しいけど」
何が言いたい?
「…綺麗な人だって一杯いるのに、俺だけ見てるわけねーじゃねーか」
「よし…も…り」
「なんだよ」
俺は腕の中の良守を力一杯抱きしめた。
「わぁっ何するんだよ。苦しい」
「いやぁ…良守。すごいなお前。男を喜ばせる壺を心得てるな」
「はぁぁ…あ?なんだそりゃぁ離せー」
ジタバタと暴れる良守と繋がった部分を揺らす。
「え?なっ……あっ…あ…あんっ………ちょっ…」
そこを刺激されるのが凄く気持ちいい。
最奥を突かれて良守は何も考えられなくなる。
良守は、何とか兄に抗議したが、今更途中で止められるものではなかった。
正守は腕の中の愛しい存在に自身の欲を放った。


「良守」
「なんだよ。」
「ありがとう」
「へぇ??な…何が?」
「俺のこと受け入れてくれて。」
「…受け入れたというか何故こうなっているのか自分でも分からないと言うか…」
「良守」
「良守にしかこんなふうに触れない。約束するよ」
「…え」
「だから、良守は俺のものだよ」
「えーと兄貴は、俺のものなの?」
「ああ」
「…じゃあいいよ」

「良守。浮気したら俺は許さないからね」
「兄貴こそするなよ」
「もちろん。さて、良守。そろそろ自覚して貰おうか」
「何を?」
「俺達の関係だよお互い相手の物だって認めあって、身体も重ねてる。世間では『恋人同士』って言うんだよ。」
「よろしく。良守」
ちゅっ…と軽く口づけられる。なんか機嫌いいなコイツ…
俺は少し悩みながらも、初めて自分から兄貴にキスをした。

軽く返すつもりだったのに何時までも唇を離してくれない。
…て、え?なんか触られてるんですけど…
「もー終わったじゃん。触るなよ」
兄を押しのけて腕の中から逃れようとする。
「もう一回」
「やっ…やだよ。」
良守は身をよじるが、正守は離してくれない。
「そろそろ慣れたでしょ?今までは我慢してたんだよ」
「あ…あれで?」
「うん。今日はどのくらい我慢してたのか教えてあげよう」
だからお前の笑顔は怖いんだよ…


■■■■■


「あ、父さん?良守こっちきて熱だしちゃってさー。今晩泊めるから。烏森人手なかったら俺いくけど?…あ、そっちで行ってくれる?有り難うって言っといて。じゃ、明日また連絡するから」
それだけ喋ると、ピッ…と電話を切る。
「明日送っていくよ」
「当たり前だ5回もしやがって…」
俺がうらめしく兄を見ていると、兄はあれ?と言う顔を返した。
「いやいやいや…良守」
「なんだよ」
「今夜は、ずっと一緒なんだよ」

「…え?」
「お腹空いたろ?食事を運ばせるから食べたらまたしようね」
「……え?」
そう言って兄貴はにっこりと笑う。
だから、お前の笑顔は怖いんだよ。



なんかHシーンがあっさりしてましたね。
幸せな感じで纏めたかったので、今回はこんな感じで

2007.5.4



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