タイムカプセル 「なんだこれ?」 良守の部屋の押入奥から、クッキーの缶が出てきた。 記憶にはさっぱり残っていないクッキー缶を振ってみるとガサガサと音がする。 「うわ…中入ってる…やだなぁ…」 記憶に無いほど昔にしまい込まれたであろうクッキー缶の中身は、きっと化石に違いない…。 そのまま捨てればいいと分かっていても、どうなってるのか好奇心の方が強かったようだ。 良守はその缶を開けてみた。 「これ…」 そこには、化石クッキーではなく、つたない字で書かれた手紙らしき紙と ピー玉やシャボン玉のストロー。石英や、縄跳び等が入っていた… 「なっつかしー。そー言えばこれで遊んだなぁ。…あれ?縄跳びは『無くした』って泣いた覚えがあるぞ…なんだ俺、自分で仕舞い込んでたのか…」 懐かしさにまかせて手紙も一つ一つ読んで行く… 殆ど解読不明の上、斜め書きなどで書いてる順番なども分からないものもあるが、一生懸命書いたのだけは伝わってくる。 「ん?」 その中の一つだけがまともな字で書いてある 拾い上げて読んでみると 『よしもり の およめさん になる ときね』 と、書いてあった… 『よしもり の およめさん になる ときね』 『よしもり の およめさん になる ときね』 『よしもり の およめさん になる ときね』 『よしもり の およめさん になる ときね』 『よしもり の およめさん になる ときね』 ↑【注意】良守の脳内エコー とととととっっっ……………時音ーーーーーーーーーっ。 「良兄。何騒いでるの?」 部屋の前を通りかかった利守が声をかける。 「利守っっ!! 見てくれこれをっっ」 ドドドトドド 良守は猛ダッシュして利守に詰め寄り、利守が今まで見たこともないような輝いた瞳で説明してくる。 「よ…よかったねぇ。良兄。」 多少ひきつった笑顔で、そう答えると、良兄は澄んだ瞳でこくこくと頷く。 手紙を抱きしめ、小躍りしながら幸せに浸る兄を眺めていると とても「子供の頃の話でしょ?」等とは言えなかった… ■■■■■ 後日、その手紙は写真立てに飾られ、今も良兄の机に飾ってある。 あの時の良兄の顔を思い出すと、実現するといいなぁ… と、僕は思った。
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