上目遣い


学校の帰り道、良守はたまたま時音を見つけた

スラリとした細い肢体。
整った顔立ち。
綺麗だ…
それに時音は優しい。


良守は時音の「背の高い人が好み」というセリフを思い出していた…

ああ…
時音を見下ろせたらなぁ…
うう…なんでなかなか伸びねーんだろう

はっΣ
兄は中学の頃はもっと背があったような気がする…
つか、子供の頃から同じ学年のやつより頭一つは高かったような…
じゃあなに?俺って兄貴みたいに伸びないの??
ずーーーーーーーーーーーん。
自分の考えに落ち込む良守。


「良守、どうしたの?」
「とっ…時音」
突然振り向かれて心臓がバクバクする。

いつものように付かず離れず歩いていたのに、時音の方から声をかけてきた。
「あんたさ、いつもなら話しかけてくるのに、今日は何も言わないじゃない。
逆に気持ち悪いんだけど」
『気持ち悪い…』その単語も最近言われ慣れてきた自分が情けない…


気が付くと時音は俺のことを下からのぞき込んできた。
「俯いてるけど…気分でも悪いの?」
俯いてる俺の顔を下から覗く時音…

時音の上目遣いの瞳に、さらに心臓が跳ね上がる
時音が俺のことを、心配してくれてるんだよなこれって…
バクバクいってる心臓が、時音に聞こえないのが不思議なくらいだ。

時音、か…可愛い……
「ちょっと…震えてるじゃない大丈夫?」
「だ…大丈夫」

それだけ言うと家まで猛ダッシュ。
時音はどう思ったろう?
でも、もーあれ以上一緒に居たらこっちがもたいなぁーーーいっ。


家に帰って息を整える
心臓はまだバクバク言ったままだ。
上目遣いの時音。可愛かった…
背が伸びると毎日ああやって時音が見下ろせるのか。


■■■■■

「うおぉぉぉっ…………がんばれ俺」
玄関で気合いの雄叫び。
「よっしゃあーーーっ」


その時部屋の襖がスーッと開いた。
顔を出したのは、何故か兄貴…
「なんか随分気合い入ってるね良守。良くわかんないけど頑張ってね」


なんで、今日居るんだよ。

は…恥ずかしーーーーーーーーーーーーっ。
誰もいないと思っていた良守は激しく出鼻を挫かれてしまった…


がんばれ良守 !!

2007.4.26