夜のてのひら 3

「ちょっと…何それ…」
「あれ?報告に来てくれてたんだ。待たせて悪かったね」

正守の部屋の隅にいた夜未は、正守が帰ってくるなり服を脱ぎ出すので慌てて声を掛けようとしたが、その前に正守の腰の変色をみてしまった。
「どうやったらそんな色になるの?」
「扇さんとちょっとね」
「!!」
「だからっそんな幹部マーク付けていくから」



それは、今日の昼の話。
「裏切り者の手綱引いてる大物わかったわよ。」
私がその名前を口にすると
「ビンゴ」
「ビンゴ?」
「今ちょうどそいつに呼び出されたとこ。多分説教だな…」
そう言って「ハハ」と笑う。
でも、振り返ってぎょっとした
「ちょっとあんたそれ…!!」
その背幹部の紋が大きく刺繍されていた。
「何考えてんの!?それ、「私は幹部です」って、言って歩いてるようなもんよ!?」
「ビンゴ。」
「まさか…その格好で会いに行く気?」
無言の背が肯定を語っている…
「バカじゃないの。」
「バカだと思ってくれると助かるんだけど。」
そう言って静かに出ていった。
殺されなきゃ良いけどね…



そう思ったのは、今日の昼の事なのに…何をどうしたら人間の皮膚がこんな気持ちの悪い色になると言うんだろう…
「とにかく見せて、ほら、お布団敷いてあげるから横になって」
てきぱきと敷き布団を出し、俯せに正守を横たわらせる。
「優しいね…」
「馬鹿なこと言ってないで。医者はいないの?」
「くるよ…医療班が」
「医療班?」
夜未が聞き返すと同時に、廊下からバタバタと人の足音が聞こえる。
「失礼します」
子供の声?

入ってきたのは二人の子供。
子供達は正守の側に来ると手から光を出して、正守の腰にかざす。
すると、変色した肌は見る見る肌色になっていった。

ほっ…
よかった。いくら気に入らなくても死なれちゃ目覚めが悪いもの。

「これ、報告よ。じゃ、私はこれで」
正守の目の前に報告の手紙を置くと、夜未は部屋を出ていこうとした。
「春日さん。」
呼び止められて振り返る。
「心配してくれて有り難う。」
「別に…心配なんかしてないわ」
そう言って部屋を出てから考え直す。
よく考えたら、血の巡りをよくする薬を持っていたんだった。でも、今から戻るのも…

刃鳥さんに渡そうか…しかし、組織の頭というのは常に健康体でいなければならない。
どこから漏れるかわからないわ…

夜未は、少し考えて、結局ヨキに持って行かせた。
夜、寝る前に3つ飲んで下さい。
血の巡りが良くなります。
               春日
たったそれだけの手紙と共に丸薬を持たせる。
あれ、恐ろしくまずいのだけど…いい気味よ

戻ってきたヨキを大事そうに抱えて、次の任務へと夜行を後にした。



治療を終えた正守は、丸薬を眺めながら横になっていた
手には夜未からの手紙。
「優しいねぇ…」
誰に聞かせる出もなくつぶやき、正守は丸薬を飲んで眠りについた。



2話と3話同時up
未完放置ですみません〜。

なんかこの話、夜未ちゃんが手込めにされる話だったのに。
このまま行くと両思いになりそうですね。

2007.5.9