愛の言霊

言葉には魂が宿る。

良守 4歳

「う…ひっく…」
「もー泣かないの良守」
幼い時音が泣いてる良守を慰める。

「だっ…だって、ゆうちゃんがもー遊んでくれないって…うっ…ぐす」
「大丈夫よ。又遊んでくれるよ」
ゆうちゃんとは、良守と仲のいい近所の男の子。
些細なことで喧嘩したらしく、「もー良守とは遊ばない」…と言われたのがショックらしい。

「でも…でも……」
鼻をすすって無く幼子は、自分ではもうどうしようも無いほど涙があふれていた。

「ねぇ、良守。」
「ん?」
「大好きって言ってごらん」

「……だいすき」
「もっと気持ちを込めて。大好き♪って」
「大好き♪」
そう言って今泣いていた烏がもう笑う。
時音はやさしく微笑んで

「明日ゆうちゃんに会ったら、大好きって言うつもりで『おはよう』って言ってごらん」
「どうして?」

「何気ない言葉でも、ちゃんと気持ちは伝わるのよ」
時音の言うことは幼い良守には難しかったが、何となく判るような気がした。

次の日、良守は近所の友達と元気良く遊んでいた。
もちろん、ゆうちゃんも一緒だ。



my枕に顔を埋め、屋上で目が醒めた良守は、ふと、そんな昔の事を思い出した。
何気ない言葉でも、ちゃんと気持ちは伝わる…か。

「はぁ…」
良守は苦しく圧縮された呼吸を、溜息に代えて外へと押し出す。
俺は………時音が好きだ。

寝転がったまま、起きあがる気力もなく…恋い焦がれる胸の苦しさに耐えていた。

「好きだ」
良守の脳裏に時音の色んな表情が現れては消える。
なんだかんだ言っても幼なじみだ。つきあいは長い…

「好きだ…時音」
空に向かって幻の時音に話しかける。

それから良守は時音を呼ぶときは、自分の思いを言葉に乗せる。
好きだ…
「時音」
良守の恋心に包まれた名は、今日も優しく時音の耳に届いた。



拍手に入ってた小説です。

2007.6.7