時音に似た…

「ただいまー」
「良守」
聞き覚えのある声がする。その人物は今この家には居ないはずなのに…

「…何時帰ってきたんだよ。」
嫌そうに顔をしかめらせ、声のした方を向く。
そこには、一番良守が会いたくない兄貴の姿。
やなやつに会ってしまった…

「つい、さっきだよ。それより、お前に土産だ」
「土産?」
そう言って正守は包みを俺に投げてきた。

「なんだこれ?」
「ん…似てるから気に入ると思って。ま、部屋で開けてみな」
とんできたそれを受け取ると、それだけ言って兄は居間へと戻っていった。
「……………答えになってねーぞ。」
誰もいない廊下に向かって良守は誰に聞かせる出もなくつぶやいた…


俺は、兄貴の土産とやらの黒い包みを手に、自室に戻った。
ガサガサ…
「んっとに何入ってるんだ?これ……………………え?」

目の前に現れだブツがにわかに信じられず。取りあえず目を閉じてみる。
そしてゆっくりと目を開く。

うーん。見間違いじゃない…

それは一本のビデオテープであった。
しかもパッケージには裸でエッチポーズを決めている女性の写真。

これは俗に言うAVビデオ??
し…しかもこの写真に写るお姉ちゃん…

と…時音に似ている…。
良守は真っ赤になり、頭からSL機関車のように煙が出た。

ガシャ…ウィーン。
良守の部屋にある古いビデオデッキ…

本来ならこんな物すぐに兄貴に叩き返してやるんだが、時音に似てるのが気になる…
いやいや、ちらっと見るだけだよ。中身まで見たらきっと全然違うって分かるよ。
時音に似てないって分かったら、俺はこんなの興味がないんだ。
そうだよ。声だってきっと違うはず。中身を見たらきっと時音じゃないってのが分かるはず。

自分に言い訳をしながら、画面に映し出されるのを待つ…

一言で感想を言えば声が一番似ていた。
流石に顔は少し違いはあるものの。苦しそうに眉根を寄せ、「あ…ああんっ」なんて言ってる時音のそんな姿など、当然お目にかかった事など無い良守の目は釘付けであった。

「気持ちいいんだろう?」「や…やぁ…あんっ」なまじ顔が似ているよりも、声が似ている方が数倍興奮する。
良守はすでに直視できない状態に陥っていた…
そして、ふと気が付くと足の間ですっかり男の子が主張していた…


■■■■■


「良守」
「…ん?」
夕食後、風呂から上がって一眠りしようと自室に向かっていると、兄が手招きする。
何の用だ?と、思いながらも呼ばれるまま部屋に入り、兄の向かいの席に座る。
お土産の茶だと言って入れてくれた茶をすすっていると
「一人Hした?」
「ぶっ。…げほっ。ゴホゴホ」

「時音ちゃんに似てたろう?あれ」
良守がお茶を乱暴に置いて立ち去ろうとした、その時。
「もし、あーゆー場面になって良守ちゃんと出来る?」

「え?」
思わず足が止まる。そりゃ自信満々とは言えない。
何しろ知識では知っていても未知の領域だ。
「俺はさー。経験積んどく方が良いと思うんだよね。何事も練習って言うじゃん」

「そりゃ…まー…。てか、なんでソンナ話兄貴にしなきゃならねーんだよ。ほっとけよ。」
「そう?こういうことは身内の男に聞くものだろう?」

「う…ま、まーそうかな?…そうなのか?」
墨村家は「身内の男だらけ」で構成されているというのに、良守は正守の口車にすっかり乗せられていた。修史の方がよっぽど聞きやすいだろうに…

「よかったら俺が教えてやるよ」
「えー。ヤダよ。ヤダヤダ。ぜぇーーーーーーーーたいっっヤダ。」
良守は首を思いっきり左右に振り、力一杯拒否した。

「そうなの?後悔しない?良守。俺が何か教えてやろうなんて気になるの珍しいよ?」
絶対イヤだと言ったものの、そんなサラッと引かれては勿体ないような気になるから不思議だ。
「ま、確かにそうだけどさ」
確かに兄貴が何か教えてくれるのは珍しい。

「少しだけやってみない?」
「うーん、うーん。じゃ、ちょっとだけな」
そう言って、もう一度正守の向かいの席に座って向かい合う。
「それじゃ手も届かないよ。ここおいで」
そう言って正守は自分の隣に来るように良守を呼ぶ。

良守は特に深くは考えず正守の隣に座る。
「それでどーすんの?」

普通に質問してくる良守に吹き出しそうになりながら、正守は平静を装う。
「そうだな。まず、目を閉じて」
「こう?」
素直に従う良守にそっと近づき、何の躊躇いもなく口づける。

「ーーーーーーーーーーーーー?!!!!!んんんんんーーーーーーーーっっ」
暴れる良守を力で抑えて角度を変えて口づける…。
抗議しようと簡単に口を開く良守に間髪入れず下を差し入れる。
「むぐぅぅぅぅぅっっ」

涙目になりながら正守を引き離そうと暴れるが、正守の方が圧倒的に力が強かった。
「んー。んんーーーー。」
何とか逃れようとするがビクともしない。パニックに陥った良守は自分が結界術を使えることすら頭の端にも上らなかった。

息…苦しい。
仕方がないので背中を叩いて酸欠を訴える。
しかし、兄は止める気がないらしい。

息が苦しい…何か身体が、何かしびれてくる。
俺、もしかしたらこのまま死ぬかも…兄貴は息が出来るのか?

「…ふっ」
正守が少しずらした唇から、新鮮な空気が流れ込んできた。
もっと身体に取り込もうとして、良守の口から吐息のような声がもれた…

な…何今の?俺の声なわけ?
「んっ…はぁっ……んんっ」
一度唇を話してくれたので、あわてて息をつこうとしたのに、すぐに又角度を変えて深く口づけられる…その間ずっと正守の舌は良守の口内を甘く、優しく愛撫し続ける。
気が付くと畳が背にあたっていた…
一体いつ横になったのか良守はまったく気が付かなかったので、驚きだ。

「ん…ふっ」
はだけられた胸元に、正守の大きな這う…胸の突起へとたどり着くと、優しくなでて可愛がる…

「あ…?やっ…」
やっと唇を解放されたのに、今度は首筋を吸い上げられる。
今や未発達の少年の瞳には、ハッキリと情欲の色が宿っていた。

俺…なんで…
兄貴が触る所がどんどん痺れていって、俺の中で渦を巻いていく。

「たす…けて……」
「ん?」
いつもは大きく見開かれ、感情の起伏によりコロコロと表情を変える、あどけなさを残す瞳からポロポロと涙を流す。その涙は部屋の明かりをキラキラと映しては流れ、零れていく…

「俺…変。」
「綺麗だ…」
「?……え?」

「もっと見せてくれ…」
「あっ……あっあぁ…」
正守の指が良守の肩胛骨と背骨の間を軽く押す…それだけで背筋にゾクゾクと電流が走り、やがて腰へと流れていく…

俯せにされて、背中に唇を落とされるたびにビクリ、ビクリと反応を示す。
ざわざわした感覚を何とか宥めたくて、良守は自身に手を伸ばす。
「何?もうイキたい?」
「あ…やぁっ」

良守の動きを察知した正守が、一瞬早く良守を包み込む。
すっかり立ち上がり、震えて涙を流すソレはまさしく今の良守そのものだった。
愛おしくて仕方がない…

正守はゆっくりと手を上下させ、良守に更なる快楽を刻み込んでいく…
やりたい盛りの良守が、逆らえるものではなかった

「やっ…やだ。もうやだぁ。は…なして、兄貴」

「本当に止めて良いの?」
「……うっ」

「いいね。その困った顔。俺を求めてるのが凄く伝わってくる…」
「だっ誰が求めてなんっ……あっ…あっぁっ。や…やだ兄貴。怖い」

「何が?」
「俺…おれ、変。何か凄く変になってる。やっぱやだ。離して……お願いだから…」
良守が懇願している間も、正守の手は許してくれなかった…もう、出してしまうことしか考えられない。
やがて良守の身体は硬直し、快感の余韻をに身を震わせながらぐったりと弛緩した。

「はぁ…はぁ…っ」
すごく。すごく気持ちよかった。初めて他人の手によってイカされた快感に、良守は余韻に浸っていた…
「気持ちよかった?」
耳元でささやかれる言葉に、素直にこくこくと頷く。
クスリと笑みを漏らす正守は、濡れた指で良守の秘部をなでる。

「あ?…なに?」
「こうすると、もっと気持ちよくなれるんだよ……ほら…感じてこない?」
「か…感じてなんか…あっ」
良守が言い終わらないうちに、正守は節くれた指を良守に納める。

「……んっ」
震えながら異物感に耐える。

「分かる?指…入れたんだけど」
「な…なんでそんな事」

「ん。ここにね。凄く気持ちよくなれる所があるから、触ってあげようと思って」
「え?ちょ…あっ」
中で探るような動きをしていた指が、ある場所を通ったときに、明らかに良守の声に色が帯びた。
「ここ?」
「あっちょ…何?」
同じ場所を重点的に刺激してやる。たちまち放ったばかりの良守自身が形を変えていく…
ソレには触れずに、秘部に唇を寄せる…

「えぇぇ?…嘘っ?」
そこを舐めてやると、その行為に驚いた良守が狼狽する。
「ななな…何してるんだ兄貴??」
良守の足の間から良守の目を見つめる…
「そうだな。可愛がってやろうと思って」
そう言いながら良守の一番感じる奥を刺激する。
「あっ…んんっ」
いつの間にか増やされた指に、意識は白濁し、もう何も考えられない。
「たす…けて…兄貴」
良守は目の前の正守に助けを求めた。
もう自分ではどうすることも出来ない。
…ならば、ここまで追い込んだ正守に責任を全部押しつけてしまおう。

「いいのか?」
気が付くと耳元で囁くように声がする。
何が良いのか分からないまま。兄の首に縋り付き、こくこくと頷く。

正守は良守の両膝裏に手を添え、胸まで折り曲げる。
「あ?」
苦しい体制に目を開けた良守は、腰にあたる何かが自分の秘部にあてがわれるのを感じた。
自分が今どうなっているのかよく分からない良守が何とか状況を把握した時は
今、まさに正守が猛った自身を自分の秘部に埋め込もうとしていた時だった。

「う…うわぁ。やめろっ冗談だろっ?」
良守がパニックに陥るが、正守も今更止まらない所まで来ていた。

「う…」
挿入ってこようとする正守を本能的に拒絶する。
ちゅっ…
正守は軽く口づけてから、するりと良守の口の中に舌を忍ばせる。
「んんっ…」
先程覚えたばかりの、深い口づけに酔う…
自然に身体が弛緩していく。
その隙をついて正守が中に入ってきた。

「や…あっ…」
どうしよう…どんどん中に入ってくる。
不安になった良守は兄の顔を窺う。
正守は真っ直ぐに自分を見つめていた。自分の顔が苦痛に歪むと、宥めるように背をさすり、落ち着くのを待ってくれる。
良守は兄の首に回した手を引き寄せ、正守にぴったりと肌を合わせる。
兄貴は俺が出来るだけ苦痛を感じないように気を配ってくれてる…
きっともう…この熱はこうしなければ収まらないのだろう。

俺は可能な限り力を抜き、兄貴の動きを止めないように協力した。
「あっあっ…あぁぁ…」
俺が協力的だったからか、何とか奥まで激しい痛みは無く治まった。
鈍い痛みは広がるものの、俺は何とか息をつく。

「良守、大丈夫か?」
俺が少し落ち着くと兄貴が声を掛けてきた。
無言で頷き、兄の耳元で「い…いいよ」と許可を出す。

震えながらその時を待つと、ゆっくりと兄が動き出す。
「あ…あっあっ…な?なに?嘘っ」
同時に二人の間で涙を流すそれに、兄が手を添える。
もう、何がどうなっているのか判らない。

頭の中も、身体もぐちゃぐちゃになりながら二人はお互いの熱を絡め合いながら昇りつめていった…

「はぁっはぁっ」
部屋に荒い息づかいと、腰をずらした卑猥な音が響く。

兄がずるりと引き出すと、同時に中に放たれた情欲がどろりと流れ出る…
その瞬間この行為が現実に行われた事を、改めてまざまざと見せつけられた気がした。
しかも、ソレを兄がティッシュで拭いてくれる…
なんか、ますます落ち込むんですが…

「はぁ…なんでこんな事になっちまったんだろう…」
良守が誰に聞かせるでもない一人言をこぼすと

「経験にはなっただろう?」
俺は事の起こりを思い出して、深いため息をついた。

「最初、ちょっとだけとか言ってなかったっけ?」
「あ、今夜烏森変わってあげるね。いけないだろ?」

「話すり替えるなよ」
良守がすくっと立ち上がろうとしたその時。

恐ろしく腰に鈍い痛み。今まで経験したことのない身体の内側からじわじわと脂汗をかくような感覚が広がる…。
あまりの痛みにその場にうずくまる良守。

「ほら、部屋まで運んでやるから」
服を着るのを手伝ってやって正守は良守に肩を貸す…。お姫様だっこしてやっても良かったのだが、痛みをこらえながらそろそろと歩く良守を見るのが楽しい。

その夜、正守は張り切って烏森に出かけたという…



2007.5.1



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