時音に似た…2

あれ以来兄貴には会ってない。
烏森の勤めを果たすと、すぐにまた家を出たらしい。

あれから一週間。
「あれって…やっぱり…」
セックスというものだよな…うーん。

兄貴と?兄貴としたのか?
いや…何かの間違いだろう。

なんとなく夢だったんじゃ…などと結論づけようと考えてしまう。

「…やっぱ夢じゃねーよなぁ」
良守は両手で頭を抱えて、教室の机に突っ伏した。

なんで兄貴は、あんな事したんだろう…
その場の勢いだとか?
よくわかんねーや。
…なんか俺…この間から兄貴のことばかり考えてる



「結!  滅!」
妖を滅して、天穴で吸い取る…また兄貴が浮かんでくる…
何考えてんだ俺…。考えを振り払おうと頭をはげしく振る
「良守」
「…時音」
「どうしたの?あんた何か最近変よ」
「うん…」
最近ぼんやりと兄貴のことばかり考えてる。

「はぁ…時音。そろそろ帰ろうか」
「そうね。今日は大した妖も出なかったし、それより、あんたちゃんと休みなさいよ」
「うん…」
俺は生返事をして家に戻った。

墨村の装束を脱いで着物用のハンガーに掛けると、良守は布団に倒れ込んだ。
日が昇ればまた学校だ。もう、あまり時間がない。眠っておかないと…
俺は目を閉じて睡魔に意識を預けてしまった。

「ん……」
ゆっくりと身体から覚醒する。
誰かが俺を触ってる…起きるまでもなく、それが誰かは判ってた。
「兄貴…てっ…なな…何してるんだよ」
良守が覚醒したときには、寝るときには来ていたはずのパジャマは何処にも見あたらず、一糸まとわぬ姿のまま、自分の大事なものをしっかり握られていた。
「ん?あんまり気持ちよさそうに寝てるから…」
正守は身体を伸ばして良守に口づける。
「もっと気持ちよくしてあげようと思って。」
「にっこりと笑うな…。お前が笑うと逆に怖いんだよ」

「怖い?」
良守の吸い付くような肌の感触を楽しみながら正守は良守の目を見つめる…
まっすぐに…

「何が怖いの?快楽に溺れそうだとか?」
クックッ…とのどの奥で笑いながら良守の唇を奪う。
「ん…っんう」
奪うような口づけに、あの晩の記憶が生々しく脳裏をよぎる…

兄に抱かれた自分…
また、されちゃうのかな。どうして俺は逃げないんだろう

こんな事してちゃいけないって判ってるのに…
兄貴のしてくれること、一つ一つが気持ちよくて、身体が「もっと」って要求してる。
「あ…あんっ」
吐息のような嬌声が漏れる…
これじゃ、俺が感じてるみたいだ。

兄貴が胸の突起に舌を這わす…優しく舐めたかと思うと、こするように舌で押す。吸い付いては優しく歯で刺激して…もう一つある突起も指で弄られる…。

泡立つかのように身体に甘いしびれが広がって…もう、何も考えられなくなっていった。




ゆっくりと兄貴が挿入ってくる。
「ん…」
俺は大きな兄貴の背に手を回し、ただ黙ってその感覚に耐えていた。
「気持ちいいよ。良守」
全部を納めきった兄貴はそんな感想を漏らす。
「き…もち、いい?」
「うん。良守はどう?」
気持ちいいよ。でも、そんなの言えない…

「良守、俺のこと好きだろ?」
「え?」
「俺のこと嫌いだったら、もっと拒否るだろうからね」
「…」

そんなことあるわけない。
兄貴が動き出すと、つながった部分から卑猥な音が明け方の部屋に響く。
「あっ…あっ……」
兄貴が動く度に、俺の一番良いところを刺激していく。
その部分に意識が集中して、他のことが何にも考えられなくなる。
「あっ…もうっ…ああーーっ」
俺の身体が反り返り、足の先まで奮わせながら昇りつめたときに、兄貴は絶妙なタイミングで腰を強く打ち付けたかと思うと、俺の中で達してしまった。


「はぁはぁ…」
気が付くと防音結界が張ってある。外界から遮断されている為か、小さな息づかいまで耳元で聞こえる。
兄貴の息づかいが妙にリアルに感じて、どきどきする。
兄貴も感じてくれた?
目が合うと、兄貴が笑う。胸がもやもやしてくる。
「好きだよ」
どき。心臓が跳ね上がる。それを兄貴に知られるのがイヤで兄貴に背を向ける。
兄貴はどう思っただろうか…
兄貴が立ち上がる気配がする。

シュルッと着物に袖を通し、慣れた手つきで着付けていく…
「兄貴…」
「ん?」
「もう行くのか?」
「ああ。夜行の仕事とかの合間に来てるからね。それだけ良守に会いたいんだよ」
「次…いつ来るんだ?」
「え?」
兄貴が驚いて振り返る。
「待っててくれるの?」
う…そんな嬉しそうな顔するなよ…
「まぁな」

「これ…」
兄貴が指さした俺の胸には赤い跡が残ってる
「俺の所有物って印が消えない内に戻ってくるよ」
「だ…誰がお前の所有物だっ」
ははは…と笑いながら兄貴は出ていった。

気が付いたら兄貴のことばかり考えてる。
多分…この気持ちは、俺が長年時音に抱いていた気持ちと…少し似ている。



2007.5.2



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